FC2ブログ
自作小説を掲載したり、興味のあることを語ったりするブログです。
2014/06«│ 2014/07| 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 »2014/08
00:00:00
ブログ開設。

大樹の木陰で涼むような、居心地の良いブログになりますように。

注意!
当ブログは著作権を放棄しておりません。
くれぐれも無断転載の無いようお願い致します。

(あまり堅いことを言う気はありませんので、常識の範囲内でお願いしますね)

リンクはフリーです。
リンクされた際にご報告を頂ければ、こちらもリンクを致します。

※ 作品をご覧になる際には、カテゴリ『シリーズ目録』が便利です。
スポンサーサイト
FC2コンテンツマーケット - http://adult.contents.fc2.com/
見てはいけない。見てしまったら最後!
[PR]

【40歳以上でもペニス増大】最短3日で実感!5cmは当たり前?
「妻がチンコ入れられて失神するのをはじめてみました(笑)」

2014/07/05
21:41:04
※腹責めモノ。苦痛系&嘔吐注意。


『不沈の無神経女』。
それが、女子ボクサー・細貝理緒奈のニックネームだ。
相手選手や観客に対し、配慮のない発言を繰り返す様……だけが由来ではない。
理緒奈が、『痛みを感じない人間』でもあるからだ。
彼女はボクサーとしてデビューして以来、ボディで倒れた経験がない。
そればかりか、苦悶の表情を浮かべた事さえない。
どれほどボディを打たれ続けようと、締まりのない笑みを浮かべたまま相手を蹂躙する。
いかにフライ級のパンチといえど、その様は異常極まるもので、過去には幾度も薬物使用の疑いがかけられた。
しかし、検査で異常は出ていない。
ゆえに理緒奈は“無痛覚症”なのか、と噂されている。

種明かししてしまえば、理緒奈は無痛覚症ではない。
世間が暗黙の内に疑っている通り、試合のたびにドーピングを施している。
仕掛け人は、理緒奈のセコンドである谷内。
スポーツ医学の権威でもある彼の開発した薬が、理緒奈に異常な耐久力を与えていた。
谷内の薬は、摂取した者の交感神経を刺激する。
結果としてアドレナリンの過剰分泌が起き、選手の痛覚を劇的に鈍らせる。
試合中のボクサーが一般的に分泌するアドレナリンの6倍もの量だ。
そうなれば、たとえ車に撥ねられようとも痛みを感じない。
品性と引き換えに、一切のダメージを無視できる体となる。

何人ものボクサーが、このペテンの餌食となってきた。
数知れぬ努力の結晶を踏みにじり、理緒奈は今宵、とうとうフライ級のベルトを獲りにかかる。
日本中の大多数が、王者による返り討ちを期待している事だろう。
『ストイック・ヴィーナス』弓木麗佳……。
アイドル級のルックスを有しながらも、比類なきストイックさで自らを鍛え続けてきた古強者。
その試合内容に博打性はない。どのような相手にも、ボディ打ちを基本とした堅実なボクシングをする。
それはまさしくボクサーとしてのあるべき姿であり、ボクシング界の最後の良心ともいえた。

「調子に乗んなよ、このマグロ女!」
「お前なんかが麗佳さんに敵うもんかよ! 選手としての厚みが違わぁ、厚みが!!」
「麗佳ー、そのガキにボクシングの怖さ教えてやれー!!」

途切れることのない怒号が、四方からリングに浴びせられる。
理緒奈はコーナーに背を預けたまま、トップロープ越しにグローブを突き出す。
親指を下にした、『地獄へ堕ちろ』の形で。
ブーイングがいよいよ苛烈さを増し、ドームに響き渡った。
実にふてぶてしい態度だ。半目の柄の悪い目つき、締まりの無い口元。
鎖骨までのダークブラウンの髪は、その性格を示すように緩くカーブを描き、先端のみ淡い朱に染まっている。
体型は至って普通。ただし、“ボクサーとしての普通”ではない。“一般人としての普通”だ。
腹筋はたるみこそ無いが、割れている様子も無い。
その辺りを歩いている女子校生のセーラー服を捲り上げたような、平々凡々な腹部だ。
とても、タイトルマッチに挑めるような肉体には見えない。

その点で言えば、麗佳などはまるで違う。
腹筋はしっかりと六つに割れ、側筋が実に美しい。
手足もアスリート特有のエッジの利いたもので、けれども女性らしさが損なわれていない。
顔立ちは完全にハーフのそれで、化粧栄えのするものだ。
癖のない黒髪は邪魔にならないよう後ろで括られており、実にスポーティーな印象を与える。
どこを取っても優等生という風で、全く嫌味が無い。
常に喧嘩を売り続けるような理緒奈とは、なるほど好対照といえた。

「タイトルマッチだからと言って、気負う必要はないよ。いつも通りにやりなさい」
谷内は理緒奈の額の汗をタオルで拭いながら、淡々と告げる。
理緒奈は、その忠告を聞いているのかいないのか、小馬鹿にするような表情で対面の麗佳を眺めている。
セコンドアウトが命じられ、リング中央に歩み出る間にも、その表情は変わらない。
「ここで負けて、身の程を知りな。小細工で取れるほど、ベルトってのは軽くないんだよ」
麗佳は静かに告げた。
記者からのインタビューには模範的な回答しかしてこなかった彼女だが、内心では思うところがあったらしい。
しかしその決意をぶつけられても、理緒奈の笑みは消えない。
「残念だけど、無理矢理もぎ取っちゃうから。勝てるわけないじゃん、今のあたしに」
妙にギラついた瞳は、完全に薬物中毒者のそれだった。



かくして、ボクシングの威信を賭けた一戦は始まった。
理緒奈は開始直後にビーカブースタイルを取る。
グローブを噛むような鉄壁の頭部ガード。頭は打てないぞ、さぁ腹を打て。そう誘っているかのようだ。
麗佳はボディ打ちの名手と名高く、本人にその自負もあろう。当然、狙いに行く。
「シッ!」
電光石火。相手の正面に踏み入った次の瞬間、右膝を深く沈めて斜め40度の角度でフックを抉り込む。
ドッ、という鈍い音が、観客席後方にも届いた。
リング上で幾度となく叩き込まれてきた、肝臓直撃の殺人ブロー。
それをもろに喰らった相手の反応は皆同じだ。顔を歪め、体をくの字に折って膝をつく。
しかし……理緒奈は違う。
「ふふっ」
両グローブの端から笑みを覗かせ、挑発するように麗佳の瞳を覗きこんでいる。
「くっ……!」
麗佳が表情を強張らせた。噂には聞いていても、実際にパンチが効かないとなると別物らしい。
特に彼女は、直に殴った事で気付いたはずだ。
理緒奈の腹筋が、事実として柔な事に。
脂肪に隠されたしなやかな筋肉……ではなく、素人の腹筋も同然ながら、ボディブローが効かない。
その異常性にはオカルトめいた怖さがあるだろう。
とはいえ、麗佳も歴戦の猛者だ。特殊な相手と戦うのは初めてではない。
一発で倒れないのなら、二発。二発で倒れないのなら、三発。三発で無理なら……百発でも。
相手が限界を迎えるまで殴り続ける覚悟が出来ている。

「フッ、シィッ!……シッ、フゥッッ!!」
麗佳はボディを打ち続けた。
鋭い息を吐きながら、あらゆる角度から、緩急を織り交ぜて。
後のビデオ映像によれば、丸2ラウンドの間、ほぼ2秒に一発という頻度で攻撃がなされていたそうだ。
当然、理緒奈の腹部には変化が表れた。
刻一刻と赤い痣が広がり、繋がりあい、特に良く打たれた部位は赤黒く染まっていった。
そのダメージは放送打ち切りが検討されるほどの凄惨さで、過度の損傷を理由にTKOが宣告されてもおかしくなかった。
そうならなかったのは、憎き理緒奈がさらに苦しむように、という目論見もあったのだろう。
しかしそれ以上に、理緒奈自身が僅かにも闘気を萎えさせていない事が大きい。
「フーッ……フーーッ…………」
理緒奈は、いよいよ病的にギラついた瞳で麗佳を観察していた。
獲物が弱ったところへ襲い掛からんとする獣のように。
「はっ……はぁっ、はぁっ、はぁっ………………!!」
いつしか息の荒さは、攻める麗佳の方が酷くなっていた。
2ラウンドの間打ち続けだった疲労もあるのだろうが、それ以上に精神的な消耗が激しいのだろう。
深呼吸の合間に見られる、左目尻の痙攣……それが麗佳の動揺を如実に表していた。

転機は、3ラウンド中盤に訪れた。
それまで何十と打ち込まれてきた麗佳のフックが、理緒奈の左グローブに弾き落とされたのだ。
疲労の蓄積で甘く入ってしまったのだろう。麗佳は容易に体勢を崩し、体を開いてしまう。
「っ!」
麗佳が顔色を変えた。
男をそそる絶望の表情。
勘の鋭い女性だ、その表情は、自らの置かれている危機的状況を正確に把握した結果だろう。
ドッ、と鈍い音が響き渡った。
疲労を全く感じさせない、憎らしいほどに綺麗なフォームのフック。
それが深々と麗佳の腹部に沈み込んでいた。
「っがァ…………!!」
麗佳の反応は生のものだ。
目を見開き、口を半開きにして苦悶を表す。
体はくの字に折れ、腕で腹部を庇いながら力なく後退する。
『お、おいおい……効かされたのか!?』
『いや、ありえねぇだろ。麗佳の鋼のストマックだぜ……』
観客席からざわめきが漏れた。
麗佳の耐久力は、同階級の中でもけっして低い方ではない。
しかし疲労が溜まった状態でのボディ打ち、それもほぼカウンターで喰らっては、平静ではいられないらしかった。
理緒奈は渾身の一打を打ち終えた後、静かに構え直す。
ビーカブーではなく、ほぼノーガードに近い構え。もはや守りを固める必要なしという意思表示だろう。
そもそも、力なく後退する相手に追撃しない時点で、舐めた態度と言わざるを得ない。

「へーぇ……フツーはボディ喰らったとき、そういう反応するんだ、チャンピオンでも。
 明日からはアタシがチャンピオンだから、参考までに覚えとくよ。
 って言っても、アタシにはそんなみっともないマネ、とても無理だけど」
理緒奈は挑発の言葉を投げかける。
誇り高き王者として期待を受ける麗佳は、その挑発を受け流せない。
「煩い!」
短く叫ぶと、足を使って一気に理緒奈との距離を詰めた。
無論、ただ近づくだけではない。ようやく覗いた相手の顎に向けて、踏み込みつつの右ストレートを放つ。
しかし、その動きは万全ではなかった。疲労と腹部のダメージが、1割ばかり彼女のスピードを奪っていた。
ほんの1割、されど致命的な1割。
理緒奈は上体を傾けて悠々とストレートをかわしつつ、斜め下から突き上げるように右拳を振り上げる。
ドッ、と先ほどより重い音がマイクに拾われた。被弾箇所は臍の真上だ。
「うう゛---っ!!」
絶望的な呻き声が上がる。アイドル顔負けとされる桜色の唇から、漏れだした声。
『うわぁあーーっ、麗佳ぁっ!!』
どこからか悲痛なファンの声が響き渡る。
その直後、二度目の悲劇が襲った。動きを止めた麗佳に対し、理緒奈が返す刀の左拳を抉り込んだのだ。
防御を捨てた代わりに、相手を痛めつける技術だけは面白半分に鍛え上げたのだろう。
二発目の理緒奈の左拳は、一発目と寸分違わぬ場所……麗佳の優美な臍の真上を抉り上げた。
不意を突かれて力を込め損ねたのか、それとも疲労で力が入らないのか。
6つに割れた健康的な腹部には、理緒奈のグローブが半ばほども沈み込んでしまっている。
『そんな…………!!』
観客の声が先に響き渡った事を考えると、実被害までには一瞬の猶予があったのだろう。
「おご、っが…………ァ………………!!!!」
麗佳はとうとう、顔一面に苦悶の余波を広げた。
目はこれ以上なく大きく開き。
口は女の拳がそのまま入ろうかというほどに開かれ、舌と下部の歯並びを綺麗に覗かせ。
たとえば四肢の一本を失うときでも、人間はもう少しまともな表情をしているのでは。
そう思わせるほどの壮絶な顔つきだった。

ダ、ダン、と耳障りな音がドームに響く。
それは麗佳の右膝、そして左膝が、わずかな時間差でマットに叩きつけられた音だ。
「ダ………………ダウン!!」
レフェリーが、苦虫を噛み潰したような表情で宣言する。
彼も、本心では麗佳の側だろう。ボクシングに真摯な麗佳が、不真面目な理緒奈に制裁を加える事を望んでいるのだろう。
しかし現実には……自らの言葉で、英雄の不利を告げているのだ。なんという皮肉だろう。
『ひぃいいっ、立ってくれぇ麗佳!!』
『う、ウソだろ! あんなに鍛えまくってるの、テレビでやってたじゃねぇか。効かねぇよなあ、なぁ麗佳っ!!』
狂乱が場に渦巻いていた。
その状況を、ニュートラルコーナーの理緒奈は満面の笑みで眺め回す。
「ひひひ、啼いてる啼いてる…………」
デビュー戦で期待のホープを血塗れにして以来、理緒奈には常にブーイングが付き纏ってきた。
そして、それを完勝で黙らせる事を、全ての試合でやり遂げてきた。
今回もそれは同じ。そして今日それが為された時、自分は全国一の強者という称号を得るのだ。
笑いが止まらないというものではないか。
「うう、ぅふぅううぅぐっ…………うふぅっ………………」
麗佳はカウント5が過ぎても、左手で腹部を押さえ、右手でマットを掴みながら這い蹲ったままでいた。
青コーナー最前列からなら、腕の間の表情が覗ける。
右目は閉じ、左目はやや上を向いており、口からは3本の濃密な涎の線がマットと繋がっていた。
目頭から鼻の横を通って流れ落ちる涙の線が、妙に女性らしさを感じさせた。
もう無理なのでは……表情を見た人間の何人かは、早くもそう感じたらしい。

しかし、麗佳はカウント8でマットを押しのけて跳ね起きる。
ボクサーとしての性か。たとえ内股気味であろうとも、確かなファイティングポーズを取る。
『おおおっ、あっさり立ったぞ!?』
『わざとカウント8まで休んでたって訳か。流石だぜ!!』
客席から歓喜の声が上がる。レフェリーもまた安堵の表情を浮かべた。
「ボックス!!」
その掛け声で、闘いが再開される。
肉体的損傷は、比べるまでもなく理緒奈の方が大きい。
しかし現実に表情を歪めているのは麗佳の方だ。
その不釣合いさが、理緒奈というボクサーの異常性を改めて観客に認識させる。
恐怖からか、その余裕すらなくなったのか、いつしか理緒奈へのブーイングは聴こえなくなっていた。
代わりに、希うような悲痛な麗佳への声援ばかりが搾り出されている。
「はぁっ!!」
麗佳はそれに応えようとする。応えることを義務付けられている。
しかし、その動きはいよいよ精彩を欠くものとなっていた。

理緒奈は余裕ある動きで麗佳の攻撃をかわしつつ、積極的に攻勢に出る。
最初の2発で麗佳の動きを止めた後は、小気味良いリズムで左右のフックを繰り出していく。
「ウっ、くぶっ、ン、う゛っ…………!!」
麗佳は左右の脇腹に叩き込まれるフックを受けてよろめき続けた。
そしてコーナーに追い込まれる寸前、尻餅をつきそうになるのをロープに手を掛けて防ぐ。
しかし、素直にダウンしていた方がまだ良かったのかもしれない。
眼前に迫る理緒奈に対し、麗佳はその痛んだ腹部を晒す格好になったのだから。
ギヂッ、とロープが痛々しく軋んだ。
中心から大きくしなったロープ。しならせているのは、腹部に痛烈なストレートを叩き込まれた麗佳だ。
打ち込みは今度も絶望的に深い。
「むぐぅっ………………!!」
右頬の奥を噛みしめ、凛とした表情で前方を睨み据える麗佳。
しかし一見力強いその視線は、どこか焦点がおかしい事に気付くだろう。
強靭なロープが元に戻り、麗佳の肉体を理緒奈の拳に押し付ける方向へと作用する。
そこに生まれるエネルギーを前に、麗佳の体内は耐え切れなかった。
「ぶふゅっ」
その小さな破裂音が麗佳の唇から漏れた。
続いて、しかと引き結ばれていた右唇から、一筋の液体が零れ落ちる。
白いそれは、初めは唾液かと思われた。しかしその一瞬後、誤魔化しようもないほど濃い黄線が上書きされる。
『きゃーっ、吐いてるっ!!』
『うっわマジかよ!?』
『オォイ、マスコミは映すのやめてやれよ、あんなトコよ!!』
場が一気にざわついた。
『ストイック・ヴィーナス』弓木麗佳の嘔吐。そんなものは、今まで有り得なかった。
スクープ性こそあるだろうが、けして公の場に晒されてはならないものだった。
なにしろ、アイドル顔負けのルックスを持つ日本チャンプだ。その広告塔の放送事故など、あってはならない。
数台のカメラが慌てて中継を切る中、麗佳はさらに幾筋かの吐瀉物を吐き出していく。

理緒奈は、それを冷静に観察していた。
そしてちらりとセコンドの合図に目をやった後、追撃として拳を放つ。
しかし、力はない。拳は、軽く麗佳の顎を叩く。失神さえしない程度の軽さで。
『え…………?』
麗佳と観客が、一様にその行動に疑問符をつける。
ヒントは理緒奈の表情にあった。麗佳を見下すような、嘲るような表情に。
そう、彼女は舐めているのだ。本来ならここで仕留められた、けれども慈悲で活かしておいてやる……そう言っている。
その真意に気付いた瞬間、誇り高い王者は激昂した。
「っあ゛あぁ゛ぁ゛っっ!!!」
荒々しい咆哮と共に理緒奈に殴りかからんとする。
しかしその動きは、あろう事かレフェリーによって遮られた。
「くッ!?」
なおも暴れる麗佳に、レフェリーは同じ言葉を繰り返す。
「…………まれ、止まれ! 弓木、ゴングだ、止まれ!!!」
その言葉を認識した瞬間、麗佳は唖然とした表情で動きを止めた。
試合中にゴングを聞き逃すなど、初めてのことだ。
理緒奈の嘲笑が響き渡った。
「あっはっはっ! 基本ルールぐらい守ってよね、チャンピオン。
 あとゲロ臭いから、ちゃんと口ゆすいで次始めてよ?」
タブーに躊躇なく踏み込みながら、『不沈の無神経女』理緒奈はコーナーに戻っていく。
場は完全に彼女に掌握されていた。
観客席から失意の溜め息が漏れたのは、けして気のせいではないだろう。


この試合における麗佳の戦いぶりを、蔑むファンはいないだろう。
チアノーゼの症状をありありと顔に浮かべながら、麗佳は果敢に前へと出続けた。
ポイント勝ちに逃げず、あくまで理緒奈の強みである腹筋を攻略して勝とうとする。
それはボクサーとしての、いや人間としての尊厳に満ちた姿だった。
しかしその勇敢さが、麗佳を刻一刻と崩壊へ導く。

6ラウンド中盤、状勢は決定付けられた。
それまで懸命に打ち合いに応じていた麗佳の拳が、むなしく空を切る。
入れ替わりに理緒奈の強烈な一撃が入った。
縦拳の形で接触し、内へと捻り込むように打つ、コークスクリューブロー。それが麗佳の下腹部に突き刺さる。
麗佳の身体がよろめいた。
ロープへ肩を預けるように倒れ、目を半開きにしたまま、グローブで腹部を押さえている。
明らかに様子がおかしい。
「弓木、大丈夫か? ……弓木?」
レフェリーが麗佳の顔を覗き込み、はっとした表情を見せる。
「ふう゛っ…………!」
麗佳は涙を零していた。
優美な顔をこれ以上ないほど歪め、止め処なく涙を零していた。
黒い瞳に宿るのは絶望。自らの身体ゆえに、現在の損傷の度合いもよく解るのだろう。
それでも、諦めない。
ほとんど立っているのがやっとの状態。両の脚を痙攣させながらもなお、麗佳はファイティングポーズを取る。
「やれるのか、弓木!?」
レフェリーは縋るような声で告げた。
本来であればストップも已む無しという状況にありながら、麗佳の勝利を諦めきれない様子だ。
「う……うぅ…………ぁぁ…………あ!!」
麗佳はその期待に応え、猛然と前へ突き進む。
しかしその道の先には、獰猛な肉食獣が大口を開けて待ち構えていた。

麗佳のファン達は、幾度同じ光景を目にしただろう。
麗佳の研ぎ澄まされた打撃が防がれ、逆に理緒奈の拳が優美な腹筋に叩き込まれる光景を。
スタンスを広く取り、十分に力を乗せてのボディ。
それは、麗佳の片足を僅かにマットから浮かせるほどの威力があった。
「う゛っ、ぐぅう゛うっっ!!!」
もはや麗佳に声を抑える余裕などない。
凄絶に顔を顰めながら倒れる麗佳は、その勢いで仰向けに寝転がる。
「はっ、はひっ……ひっ…………!!」
形のいい胸を病的なほど上下させる、痛々しい寝姿だ。
「ダウン!」
レフェリーが苦々しく宣言し、理緒奈へコーナーに戻るよう指示を出した。
しかし。
「ったく、しつっこいなぁ」
理緒奈は苛立ちも露わに告げ、麗佳の傍らに歩み寄る。
「何をしてる。早くコーナーに…………」
レフェリーがなおも告げた、直後。
「さっさと…………落ちろ!!」
理緒奈のグローブが振り上げられた。狙いは、無数の赤い陥没が残る王者の腹筋。
「ッ!? よせっ!!」
レフェリーの空しい叫びと同時に、拳は風を切る。
鈍い音が響き渡る。
そのとき、場の皆が目撃した。六つに割れた麗佳の腹筋へ、グローブが根元まで埋没する様を。

「…………ごっ……ッォぉおおお゛っ…………ッあ………………!!」
えづき声と共に、麗佳のすらりとした右脚が宙へ投げ出される。
焦点を定めず見開かれた瞳、舌を突き出した大口……深刻なダメージが表情から見て取れた。
「ッハァ!」
嬉々として2打目を狙う理緒奈。
それを、レフェリーが突き飛ばすようにして止める。
「もうやめろ! ダウン後の攻撃は反則だ!!」
ロープ際で指を突きつけて注意を与えるが、理緒奈の顔に反省の色は見られない。
レフェリーは思わず減点を宣告しようとする。

そのやり取りの最中、レフェリーの背後では、王者の最後の意地が燃えていた。
腹部を抱えて苦悶しながらも、麗佳は徐々に身体を起こす。
「負け………………る……か………………ッ!!!」
完全に2本足での直立を成した瞬間、麗佳は猛然と駆けた。
レフェリーを押しのけるようにして、全力で拳を突き上げる。
執念の拳は、見事に理緒奈のボディに突き刺さった。
「んっ」
理緒奈が小さく呻く。
さらに一撃、さらに一撃。理緒奈の身体は左右に揺れ、観客席から歓声が沸き起こる。
効いていない筈がない。死力を振り絞った麗佳の連打は、そう思わせるほどインパクトのあるものだ。
けれども理緒奈は、その連打の中で反撃を試みた。
鋭いフック。麗佳は素早く後ろへ下がってそれをかわし、しかしそこで呼吸の限界を迎えてしまう。
「ハッ……はっ、はっ…………ハァッ、はぁあっ…………!!」
顔中に汗を浮かべ、苦しげな呼吸を繰り返す麗佳。
理緒奈は口元に笑みを浮かべ、悠然と歩を進めて彼女に止めを刺そうとする。
しかし、ここで初めて理緒奈に異変が起きた。
歩みだした足がもつれ、そのまま膝から崩れ落ちたのだ。
「ダ……ダウン!」
レフェリーが信じがたいという様子で叫ぶ。客席からの歓声はいよいよ会場を揺るがす程のものとなる。
それもそのはず。これが理緒奈のキャリアにおいて、初のダウンなのだから。
やはり麗佳はこれまでの相手とは違う。ならばこのまま、逆転もありえるのでは。
理緒奈がキャンバスに膝をつく光景は、観客にそうした希望を持たせるに十分なものだった。
けれども……現実は残酷だ。
大多数の人間がどれほど切実に願おうと、結果を決めるのは事実の積み重なりでしかない。
勝利を期待される麗佳に、もはや追撃の余力はなく。
敗北を期待される理緒奈は、生涯初のダウンを奪われた屈辱で、その相貌を獣のように歪める。
「…………よくも………………この……このォアマアァァアッッッ!!!」
理緒奈が吼え、ヒステリックな音を立てながら麗佳に迫った。
「くうっ…………!!」
麗佳はとうに力の全てを出し切っており、構えを保つだけで精一杯だ。
力ないガードは怒り狂う理緒奈の拳によって突き崩され、悪意の塊が臓腑を抉る。
割れんばかりだった歓声がぷつりと途絶えた。
「ごあ゛っ!!!」
痛々しい悲鳴が響き渡る。
麗佳の腹筋は、すでに内臓を守る鎧としての用を為さない。
ただ薄いだけの柔肉となって、暴虐の拳がもたらす衝撃をそのまま内へ伝えてしまう。
「お゛っ、おう、う゛んっ!!」
腹部への連打を受けて後退を続ける麗佳の体は、ついにコーナーへと追い込まれた。
いけない―――!
誰もがそう思っただろう。そしてその直感の通り、そこから王者への残虐な処刑が始まる。

「ぐごぉおお゛あえ゛っ!!!」
拳が深々と腹部へ埋没し、麗佳は喉を潰したような叫びを上げる。
あまりの苦痛に身を捩って逃れようとするが、コーナーに追い込まれては碌に身動きが取れない。
理緒奈の片手で首をコーナーに押し付けられ、もう片手で連打を浴びる。そればかりだ。
「がぁおおお゛ぼっ!!!」
王者の肉体が痙攣し、マウスピースが口から零れ出た。
唾液を纏いつかせたマウスピースは、キャンバスを空しく転がりまわる。まるで、応援する者の感情のように。
本来であれば、即座に試合を止めるべき一方的な展開だ。
しかし、それは麗佳の負けを決定付ける事を意味する。
誰もが麗佳の負けなど望んでいなかった。それがあってはならないと思い続けてきた。
ゆえに、レフェリーも判断に迷う様子で状況を見守っている。
誇り高い王者の公開処刑を。

理緒奈の拳は雨あられと降り注ぎ、元より傷ついている麗佳の腹筋を徹底的に叩き潰した。
ボゴリボゴリと腹が蠢く様からして、表皮だけという事はありえない。
恐らくは内臓までが、跳ね回る水袋のように蹂躙されている事だろう。
「ごお゛っ、おぼぇ゛ええ゛っ!!! があ゛っ、ごッ、おぶぇっ……!! お゛っ、ぉおおお゛お゛お゛っ!!!」
泣き崩れるような麗佳の表情からは、感情を読み取ることができない。
王者としての屈辱か、それとも単純に、死に瀕する者としての恐怖か。
間近で見守るものには、麗佳の美しい腿を、黄金色のせせらぎが伝い落ちていく様が見て取れた。
それはやがてキャンバスに滴り、より多くの肉眼とカメラに捉えられる。
左右の拳は、それでも麗佳の腹部を叩き続けた。
麗佳はただ、その美しい脚を強張らせ、シューズで空しくキャンバスを擦るばかりだ。
その無力な有様は、スラムの路地裏で強姦される娘と何も変わらない。
『同階級の男性ランカーより強いのでは』……そう噂されたフライ級絶対王者は、そこにはいない。
「らあぁっ!!!!」
理緒奈が殊更力を込めて打った一撃が、強かに麗佳の腹部を抉る。
「お゛、げぼ、がっ…………あ゛げ…ごぼぉ゛…………………っっ!!!」
その一撃で、とうとう麗佳は人の姿を失った。
見開かれた瞳の中で、天井のライトを凝視するようにぐるりと黒目が上向く。
身体中の痙攣がとうとう頚部にまで行き渡り、顎と、頬が膨らみ、一秒後。大量の吐瀉物が吐き出される。
その様を見て客席から悲鳴が上がり、レフェリーが頭上ですばやく両手を交差させた。
ゴングがけたたましく打ち鳴らされ、強制的な試合の幕引きを世に示す。
その瞬間、理緒奈は拳を止めて高く振り上げた。
暴虐からようやく開放された麗佳の肉体が、理緒奈に縋りつくようにズルズルと崩れ落ちる。
理緒奈はそれを汚らしそうに押しのけ、麗佳を文字通り“キャンバスに沈めた”。
自らの吐瀉物に塗れながら、尻だけを高く突き上げ、乱れた黒髪を放射状に拡げる醜態。
それは、レフェリーや観客達の理想が敗北した姿だ。

「はっはっはっはっは! さて、あたしがこいつに敵わないとか、ボクシングの怖さ教えてやるとか言ったお馬鹿は誰?
 必死に必死に、極限まで教科書通りの鍛え方した結果、あたしに全く歯が立たなかったねぇ!
 これで分かったでしょ、このあたしが、ボクシングの常識なんかより遥かに上だって事がさぁ。
 このミジメなザマをよーく目に焼き付けときなよ。あんたらの硬い頭が祀り上げた、スケープゴートの成れの果てをさ!!」

理緒奈は拳を振り上げながら、目に映る全てを侮辱し続けた。
絶望の溜め息、すすり泣く声…………それが場内を覆いつくしていた。
「ふふ、くくくっ…………くっくっくっくっく………………!!」
ただ1人、理緒奈のセコンドである谷内の忍び笑いを除いては。





その日の深夜。
一夜にしてヒーローとなった少女は、ショーツ一枚という姿で拘束されていた。
手足には鎖で繋がれた枷を嵌められ、凧のように身を開いている。
窓のない部屋は極めて無機質だ。
少女と男が一人、カメラが一台…………その殺風景さが、異様な雰囲気に拍車を掛ける。
「さて。心の準備はいいかな、女子フライ級新チャンピオン」
男……谷内は、何とも愉快そうな口調で切り出す。
一方の理緒奈は、そんな彼を敵意むき出しの視線で睨み据えていた。
「やるならさっさとしなよ、ゲス野郎」
理緒奈から悪意ある発言をされても、谷内は微塵も動じない。
「そうだな。私もいい加減、お預けの限界だ」
涎も垂らしそうな言い方でそう告げると、懐からひとつの錠剤を取り出す。
理緒奈から痛みを奪った薬の、解毒剤だ。
「さ、口を開けなさい」
谷内は理緒奈に命じ、開かれた口の中に解毒剤を放り込む。
ごくり、と理緒奈の喉が鳴った。
そこから、ほんの数秒後。理緒奈の雰囲気が変わる。
「…………あれ………………あ、あたし………………?」
そこにいるのは、理緒奈と同じ肉体を持ちながら、リングでの理緒奈ではないもの。
膨大なアドレナリンに支配されていない、臆病で繊細な少女だ。
「落ち着いてきたようだね。今の気分は、どうだい?」
谷内は、ひどく優しい口調で語りかける。
しかし理緒奈の瞳に映る表情には、一かけらも情らしきものが見当たらない。
それは、薬を投与したマウスを見守る研究者の目だ。
理緒奈は優しげな垂れ目を惑わせ、素人そのものの肉体を震わせはじめた。
薬が解毒されれば、まずは攻撃的な気分が消え、その後1分ほどで麻痺していた痛みが感じられるようになる。
リングの上で感じているはずだった痛みが、全て襲い掛かってくる。

「あ、あたし……こっ、怖い。ドクター。あたし、怖くて、たまらない!
 あのチャンピオンの人、ものすごく鍛えてた。凄く強かった」
「ああ。強かったね」
「あたし、そんな人のパンチを、避けずに何発も何発も受けちゃって…………
 最後の方には、意識とは無関係に膝までついちゃった。
 あたしの身体、どれだけボロボロになってるんだろ。どんな痛みが、この後来るんだろ。
 ね、ドクター…………あたし、死なないよね? この後も、生きてられるよね!?」
「……ああ、大丈夫だ理緒奈。おまえの脳は、痛みの許容力が極めて大きい。
 だからこそ、実験のパートナーに選んだ。
 だからこそ、あの捨て置けば死んでいた状態から、二度目の生を与えたんだよ」

理緒奈と谷内の会話はそこで途絶えた。
谷内は嬉しげに笑みを深める。逆に理緒奈は、恐怖で顔を歪ませた。




「ああぁぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!!!!」
咆哮とも呼ぶべき、凄まじい悲鳴が密室に響き渡る。
手足を繋ぐ鎖が煩く鳴り散らす。
痣だらけの理緒奈の腹部が、ひどく蠢いていた。
痛みを感じたゆえの反射的な反応なのだろうが、傍目には不可視の何かに殴打され続けているように見える。
「あがあぁあああ゛っ、げぉっ、ふげぇええお゛ごごごおごごぇえ゛ぐっ!!!」
目を剥き、大口を開き、唾液を垂らし。
まるで鍛えていない素人同然の腹部は、プロのパンチに耐えられる代物ではない。
本来リングの上で見せているはずだった醜態が、今この場で遅い再現を見せているのだ。
「ふふふ、いいぞ。いい表情だ、理緒奈。
 これが表の世界では、フライ級王者というのだから傑作だな。
 愚民どもは、痛みを感じないターミネーターのようにお前を見始めるだろう。
 真実を知るのは私だけだ。回ってきた“ツケ”に苦しむお前を見られるのは、この私だけなのだ」
谷内は恍惚とした表情でビデオカメラを回す。
そのフレームの中で、理緒奈は地獄の苦しみを味わい続けていた。

幾度も幾度も、ボクサーとして試合をする度に繰り返されてきた事ではある。
しかし、麗佳は強かった。パンチ力もさる事ながら、打たれても打たれても諦めず戦い続けた。
最後には、身に残った全ての力を振り絞って理緒奈からダウンをももぎ取ったのだ。
そのダメージの総量は、今までの相手の比ではない。
何人もの犠牲の果てに築き上げられた『ベルトの重さ』が、それを愚弄した理緒奈を押し潰す。

「げぼっ、おおぉええ゛っぼっ!! あああっ、もうイヤ゛ぁーーっ!!
 ギブアッぶ、ギブアップしますうっ、ご、ごめんなざいっ、もうイヤッ、もうぐるじいの……ごぶぅ゛ぇっ。
 んん゛もぉ゛ぉえ゛っ、げぼごろっ、ウ゛……っ……!! う゛っ、んん゛ごお゛お゛ぉォお゛っっ…………!!!」

祝勝会で口にしたものを余さず吐き戻しながら、理緒奈は赦しを請い続ける。
すでに全てが過去の事。
どれだけ泣き叫ぼうが、今さら赦される事などないと知りながら……。


                            終



2014/06/16
20:43:49
※スカトロ(嘔吐、小、大)注意。


健史にとって、押木戸有紗(おしきど ありさ)は強さの象徴だった。
屈強な男が幅を利かせるアウトロー世界において、女だてらに、身一つで地位を築き上げたからだ。
身一つで、とはいえ、体を売った訳ではない。
時には腕っ節に物を言わせ、時には悪魔じみた冷酷で合理的な策略を用いて。
純粋な力で以って、周囲に自分の存在を認めさせてきたのが有紗という女だ。

「あぐっ……す、すいま、えん…………れした…」
強面のドレッドヘアが、地に這い蹲ったまま哀れな声を漏らす。
それを聞き、ようやく有紗は彼の頭からピンヒールを退けた。
ドレッドヘアはよろめきながら逃走を図る。
裏路地は血にまみれ、そこで起きた争いの苛烈さを生々しく物語っていた。
しかし、有紗に付着した血液はすべて返り血だ。
ドレッドヘアは有紗より体格がよく、木製バットまで持参して不意打ちをかけた。
それでも一方的に叩きのめせるほどに、有紗は強い。
「……す、すげぇ…………」
健史は、金の入ったバッグを抱え直しながら呟いた。
いや、ようやく『呟けた』。

「ったく、要らねぇ時間取らせやがって」
有紗は煙草を取り出して火をつけながら、不機嫌そうに舌打ちする。
煙を吐く横顔は整っていた。
切れ長のくっきりとした瞳に、ハーフめいた鼻筋、血色のいい薄い唇。
油断なく引き締まったその表情は、多くの男から『中々にイイ女』と評される。
パンツ姿の似合う腰のくびれを有しており、スタイルもけして悪くない。
敵対するグループからも、有紗の容姿を貶める噂だけは聴こえてこない。
「さっさと行くぞ。無駄に時間喰ったからな」
有紗は短く告げた。
「あ、はい!」
足早に先を行く有紗を追い、健史も小走りに駆け出す。
向かうのは次の集金場所だ。
闇金業者として貸し付けた金を、利息分だけでも回収に回る。
無論、渋る相手は多い。
特に集金に来たのが若い女とあれば、ごねて場を切り抜けようとする顧客は数知れない。
しかし…………それで逃げ切れた相手を、健史は見たことがなかった。
有紗はあらゆる手段を用いて金を回収する。
元より、仕事に関してはタガの外れている女性だ。
違法スレスレの手段で相手を追い込みもすれば、倫理にもとる手段さえ辞さない。
バックについているヤクザを利用しての恐喝などは基本の基本だ。
それが元で逮捕される事になっても、有紗は微塵も恐れないのだから、追い込まれる側は地獄だ。

有紗には、怖いものなどないのではないか。
健史は常々そう思う。
しかし、そんな事はない。どれほどの強者にも、天敵というものは存在する。
有紗にとっての天敵とは、『金主』だ。
闇金業者として欠かせない資本を提供する、広域暴力団幹部。
有紗はその『金主』から金を借りている形であり、普段彼女が顧客へ強いているように、毎月利子をつけて返済しなければならない。
「いいか。『金主』の野郎に渡す分の金だけは、必ず確保しとけよ?」
有紗は日頃から、口癖のようにそう語っていた。
万が一その用意が出来なかった際の事を、何よりも危惧しているかのように。

そしてついに、その危惧が杞憂で済まない日が来る。
舎弟の一人が、目先の欲に走って大金を使い込んだ挙句、『金主』の組にまで多大な損害を与えたのだ。
単に金の返済ができないだけでなく、『金主』の顔に泥を塗る失態。
その報が齎されたとき、健史は初めて、血の気の引いた有紗の顔を目にした。



健史は有紗に付き添って、『金主』への金の受け渡し場所に向かう。
歓楽街にある高級キャバクラ……そのワンフロアを貸切にして、『金主』は愛人に囲まれていた。
「申し訳ありませんでした!!」
『金主』を前に、有紗は額をカーペットへ擦り付けて土下座する。
普段の“強者たる”彼女であれば、逆の立場こそあれ、まずありえない行動だ。
健史は、その異様な光景を目にして初めて、事の重大さが本当の意味で理解できた。
『金主』は頭を下げる有紗を物憂げに見下ろし、大仰に溜め息を吐く。
「とりあえず顔を上げなさい」
その言葉で有紗が正座に直ってからが、陰湿な嫌がらせの始まりだ。
「お前には期待してたんだけどなぁ。もう失望しすぎて、怒る気力もないよ。
 …………お前たち、私に替わって、ちょっと仕置きしてくれないか」
そう言いながら『金主』が両脇の娘の肩を撫でると、彼女達の瞳が面白そうに細まる。
普段は猫を被っているが、心の底は捻じ曲がった女揃いだ。
健史は、有紗がそうぼやいていた事を思い出す。

「えーっと、そうだなぁ。じゃあマッ君を困らせちゃったんだからぁー、反省しなさい!」
女の一人がそう告げてソファから立ち上がり、ガラステーブルにあったグラスを手に取る。
そして正座する有紗の頭上で、そのグラスを傾けた。
紫色をしたカクテルが降り注ぎ、有紗の茶色い髪で弾けて伝い落ちる。
仕立てのいいスーツに染みが広がっていく。
「っ!!」
健史は思わず息を呑んだ。あの有紗に、何と言うことを。
しかし有紗は、真っ直ぐに前を見据えたまま微動だにしない。
顔をカクテルが伝い落ちている最中にも、瞳を閉じず、眉さえ動かさない。
その根性の座り具合は、さすがと言う他なかった。
しかし『金主』を取り巻くのは、そうした侠気を理解できる女達ではない。
「なにこいつぅ、チョー生意気なんだけどぉ」
「じゃあ別の罰ねー、服脱いで。………………オラ、脱げ、っつってんの」
金主に声が届く範囲では猫を被り、有紗の耳元では地の声を出して、女達は有紗を追い詰める。
「わかりました」
有紗はすくと立ち上がり、スーツのボタンに手をかけると、見事な脱ぎっぷりを披露しはじめた。
微塵の躊躇も見せず、微塵の気後れも見せず。
無論、羞恥心がないわけではないだろう。どれだけの露出狂でも、自分の部下が見守る前で脱げるものではない。
ただそうした感情を、相手に悟らせないだけだ。

初めて目にする有紗の裸体に、健史は心奪われた。
普段、服の上からでもスタイルの良さが見て取れた有紗の肉体は、脱げばいよいよ魅惑的なものとなる。
肌は思った以上に若く、充分な張りと艶を併せ持っている。
胸の大きさはCカップといったところで、服を着ている時よりも控えめだ。
しかしそれも、スレンダーな体型によくマッチしている。
尻や脚の形も美しく、こちらに背を向けた後姿は、成熟した女優のようなそれだった。
「ほぉ。脱いでも中々の女だ」
『金主』が感心した風で告げる。
すると、その言葉がまた取り巻きの女達の嗜虐心を煽ったらしい。
彼女達は有紗の両腕を掴み、強引にソファへと掛けさせる。
『金主』の真正面……開いた脚の合間が丸見えになるようにだ。
「さぁ、マッ君にあそこ見てもらお。足閉じちゃ駄目だよ」
女の一人が有紗へ囁きかけるのを聞き、『金主』の口元に下卑た笑みが宿る。
「じゃ、いくよ」
チン、と硬質な音がし、ステンレスのマドラーがグラスから引き抜かれた。
先端に小さな球体のついたマドラー。それが有紗の秘所へと近づいていく。
しかしその狙う先は、秘裂にしては妙に上向きすぎていた。
「っ!」
有紗はいち早くその意図を察したのか、表情を険しくする。
その直後……マドラーは、有紗の尿道へと押し当てられた。
女の指の腹が容赦なくマドラーを送り込み、狭い尿道入り口を突き破らせる。
「っっっ、ぅ“っ!!!!!」
有紗はかろうじて悲鳴を噛み殺した。
口を固く引き結び、前方に視線を向けて、背筋をまっすぐに堪えている。
しかし女の指がゆるゆると前後に揺れ始めると、引き締まった腹筋が蠢くのが見えた。

そこからは、女達がそれぞれに有紗を弄び始める。
「あはっ、おしっこ出てきたぁ」
にち、にちっと音を立てて尿道をマドラーでかき回し、粗相を指摘する女。
有紗の鼻を掴んで顔を上向けさせ、どれだけ口から零れようが、無理矢理にカクテルを飲ませ続ける女。
むき出しになった乳房やその先端を、指先で弄び続ける女……。
『金主』は延々と続くその嫌がらせを肴に、薄笑いを浮かべながらグラスを傾ける。
健史には理解できない神経だ。

一時間ばかりその状態が続いただろうか。
「ごほっ、おぐっ…………う、え゛……あ……っぁ」
無理に酒を飲まされ続け、アルコールに強い有紗もさすがに意識が朦朧としはじめていた。
飲酒による尿意が訪れては、マドラーで掻き出される繰り返し。
ソファの下には、水溜りを思わせるほどの夥しい失禁跡が広がっていた。
「まったく…………食事マナーばかりか、排泄のマナーまで悪い女だ。
 せっかくのまぁまぁいい女が台無しだな」
『金主』はナプキンで口元を拭うと、立ち上がりながら続ける。
「自分で出したものだ、自分で舐めて綺麗にしろ。店に迷惑をかけるなよ、有紗」
その言葉を聞き、有紗がよろよろと身を起こす。
泥酔しているにしては力のある眼差しをソファに向け、命ぜられるまま、赤い舌を出して自らの小水を舐め始める。
健史は今日幾度目になるか解らない衝撃を受けた。
彼にとってそれは、最底辺の人間がする行為に思えたからだ。
あの強い有紗が。
小柄な自分のコンプレックスを払拭してくれる、強さの象徴たる有紗が……。

「これはいい、お似合いだぞ有紗。お前はガキの頃からの癖で、肉料理でもスープでも犬食いするからな。
 そういう意地汚い根性だから、部下がしっかり育たないんだ。
 …………ともかく、払えなかった金と私への損害分は、おまえ自身の体で支払ってもらうぞ。
 明日から、数本のAV撮影だ。見目はいい女だってのが、せめてもの救いだったな」

『金主』は大理石の床を嘗め回す有紗を見下ろし、満足げに笑いながら出口へと消える。
健史の耳には、しばしその高笑いがこびりつくように残っていた。



『金主』の言葉通り、その翌日から有紗のAV撮影が始まった。
港にほど近い倉庫の中に簡単なセットが組まれ、複数の男優を招いて撮影が進められる。
『金主』の意向なのか、撮影は有紗に羞恥を味わわせる類のものに偏っていた。

「ほーらドロドロだぁ、気持ちいいだろ。うん?」
男優が有紗に問う。
有紗は後ろ手に縛られたまま、喉奥深くに男の2本指を咥え込まされていた。
男の問いに答えはない。答えるような余裕は有紗にはない。
「あがっ……え、えあ゛っ……あ、っらぁ、ああ゛………………!!」
階段から突き落とされて腕の骨を折ったときでも、有紗は呻き声ひとつ上げなかったという。
その有紗は今、生理的な反応からのえづき声を絞り出されていた。
鼻はフックで豚のように醜く吊り上げられ、縦に大きく開いた口からは前歯が覗いて、若干の幼さを感じさせる。
瞳だけはなおも気丈に男優を見据えているが、片目は常に苦しさから歪んでいる。
男優の喉奥嬲りは執拗の一語に尽きた。
片手は常に有紗の後頭部を押さえており、苦しさから有紗の頭が上下左右に揺れても、的確にその動きに沿って指をねじ込む。
有紗の喉奥からは、幾度も嘔吐の前兆と思えるような泡立つ音が鳴っていた。
特に、天を仰いだ際に指を深く突き込まれる際には、さすがの有紗も目をきつく瞑ってしまう。
そのまま約2秒も責められれば、堪らず顎を引いて唾液を吐き出すしかない。
「けほっ、えぉっ…………あーっ、ああはっ…………う゛っ」
激しく喘ぎながらゆっくりと頭を戻し、前方から喉を弄くられる段になってようやく相手を睨めるようになる。
しかし……男優もよく解ったもので、有紗が睨むタイミングで都度指を引き抜いた。
すると、白く泡立った唾液がしとどに指に纏わりついてくる。
それを有紗の顎に塗りつけてしまえば、どれほど気丈に睨みすえようとも、威厳も何もない。
「っあーっ、あーーっ…………っはーっ…………!!」
指を抜かれた際の有紗の息遣いは、紛れもなく女のものだ。
ショッピングに興じる女子校生のものと、何も変わらない。
普段ドスの利いた声で男勝りに振舞う彼女のものとは、到底思えないほど女らしい声だ。
健史はその声を聞いた瞬間、口惜しいような、けれども興奮するような、妙な気分になった。

「…………おうタケシ。ちょっと飲み物やら漫画やら、買ってこいや」
撮影を仕切るヤクザの一人が、健史に札束を突き出しながら命じる。
健史は撮影現場を見守っていたい心境だったが、『金主』子飼いのヤクザに逆らえるはずもない。
「わかりました……」
そう言いながら小走りに倉庫の出口へ向かう。
ちょうどその背後で、状況の移ろうとしている会話が聞こえてくる。
「にしてもこいつ、喉つえーな。こんだけやっても吐かねぇ」
「だったら、もうそろそろ咥えさせちまうか?」
「だな。撮影スケジュールとはちと違うが、たまにゃこういう流れがあってもいいだろ。
 もういい加減、興奮してビンビンだかんよォ」
男優達のそうした言葉を捉えながら、健史は走る。
せめて、少しでも早く戻るために。

……しかし、場所は港の傍。
最寄のコンビニエンスストアさえ数キロ離れた場所にしかなく、さらには指定された漫画雑誌の一つが中々売っていない。
結局健史が倉庫に戻ったのは、実に2時間以上が経過した後の事だった。
当然、状況はまったく変わっていた。
健史の目の届かない場所で、何もかもが違う状況になっていた。
「んぶっ、んぐっ…………む゛ぇっ、ごぇえ゛え゛っ…………げぇえっ、げごっぉ゛っ…………!!!」
健史ははじめ、それを人の声でなく、軽リフトか何かの駆動音かと思った。
それほどに尋常でないえづき声が、一突きごとに発せられる。
勃起しきった複数人の男に囲まれ、膝立ちの有紗がイラマチオを強いられている。
尻を突き出し、相手の膝を力なく掴む逃げの姿勢。
およそ押木戸有紗という女傑が、男の物を咥えこまされて取るポーズとは思えない。
しかし。よくよく状況を見れば、それも仕方のない事だとわかる。
膝立ちになった有紗の足元には、バケツを誤って倒した時のような、夥しい量の吐瀉物が広がっているからだ。
一体それまでに何度、あるいは何十度に渡り、嘔吐させられたのだろう。
おそらく初めの内は雄雄しい佇まいを崩さなかったであろう有紗が、女としてのなまの反応を示してしまうほどに。
「ぶはっ!! ……もっ、もう…………やめ……て、くれっ…………!!」
怒張が一旦引き抜かれた瞬間、その時を待っていたように有紗が叫ぶ。異常なほどかすれた声だ。
しかし、その哀願が聞き届けられることはない。男達の嘲笑の的にしかならない。
「おら、まだまだやるっつってんだろ。逃げてんじゃねぇぞ!!」
男の一人が怒号を浴びせながら、無理矢理に有紗に怒張を咥え込ませようとする。
「ん、んん゛んっ!!」
有紗は必死に抵抗し、膝立ちから崩れるように寝転がった。
しかし、男はその上に圧し掛かるようにしてあくまで咥え込ませる。
「ん゛ーーーーーっ!!!!」
悲鳴と共に、有紗の足がばたついた。
よく引き締まった、相当な威力の蹴りを放つ足。しかしそれは今、レイプされる少女と同じ動きを辿るだけだった。
男達は、なおも暴れる有紗の腕を押さえつけ、完全に抵抗を封じてしまう。
「や゛あ゛ぁあ゛ああ゛あ゛っ!!!」
断末魔のような叫びを最後に、有紗の姿は男達の体の影に隠れた。
健史は、それでもかすかに覗く垂れ下がった有紗の眉を、魅入られたように眺めていた。
「おっ、帰ってたのか。ご苦労さん。
 …………へへ、すげぇだろ。あんまり暴れるんで、壁に頭押し付けて咥えさせてよぉ、
 3度くらい連続で吐いて、鼻からもデロデロ出てきた辺りから、急に弱弱しくなっちまった。
 ゲロで溺れる恐怖ってのは、あれほどのじゃじゃ馬にも有効らしいぜ」
ヤクザ男はそう笑いながら、ペットボトルを袋から抜き取る。
中心を失った袋の中身は、ガラリと音を立てて崩れた。



一週間が経った今も、有紗へのビデオ撮影は続いている。
健史は男達の買出しを請け負いながら、ただその撮影の様子を見守っていた。
すでに感傷はない。鳶が小動物を攫う瞬間を見守るが如く、自然の摂理を眺めているだけだ。

昨日の撮影は、有紗が男優の手で延々と潮を噴かされるシーンだった。
健史は場所取りが悪かったために、肝心のところが見えなかった。
男優の身体越しに覗くのは、有紗の膝から下と足の裏、そして足の間に飛び散る透明な飛沫のみ。
しかし、それはそれで刺激的だった。
肝心な部分が見えないからこそ、有紗の甲高い声や足の蠢きから状況を想像する楽しみがある。
飛沫が次第に蓄積し、床へ水溜りを作っていく様も生々しかった。

今日は一転し、スカトロの撮影らしい。
またしても健史の位置は悪く、有紗を背後から見守る格好だ。
けれども、それもいい。
有紗は低めの作業代の上に腰掛け、両手を後ろについたまま、脚を大きく広げていた。
2人の男がそのそれぞれの腿に手を宛がいつつ、もう片方の手で何かしている。
「ほーら、浣腸7つ目だ。そろそろ限界だろう、うん?」
逐一そうした言葉責めがあるため、行動を察するのは容易い。
有紗の表情はまったく解らないが、後ろ髪の位置から、俯いて後門を凝視していると思われる。
「まったく、辛抱強い女だ。しゃあねぇ、そろそろこいつで掻き出してやるとするか」
男の片手が一旦隠れ、棒状の何かを携えて現れる。
有紗の後ろ髪が動いた。顔を上げ、男の持ち出したものを確認したらしい。
ローションのボトルがへこむ音がする。
そして数秒後、ぐちゅりと湿った音が続いた。じゅぐ、じゅぐ、とその音は断続的に続いていく。
「おーらおら、出てきたぞぉ。へへっ、こらあすげぇ!!」
男達は嬉々としてその状況を覗き込んでいた。
有紗に恥辱を味わわせる事が愉しくて仕方ないようだ。
「…………や………………」
ほんのかすかに、有紗の声が聴こえる。男達の笑いが大きくなった。
「いや、じゃねぇんだよ。この様子はなぁ、全部ビデオに取ってんだ。ン千人って人間が見るんだよ、これを!!」
男達はがなり立てながら、有紗の腿を幾度も叩いた。
その中で有紗は、再び俯いてしまう。

状況こそみえないが、かすかに有紗の匂いが漂い始めていた。
彼女の中にあった、穢れの匂い…………。
今の健史には、それすらも魅惑的に感じられるのだった。


                                  終


04:35:30
※風俗イラマチオ&フェラチオ物。


持つべきものは友だ。
泰典に教わらなければ、俺は一生その風俗店を知らずにいただろう。
ネットで普通に検索しても見つからない。
何しろその店のホームページは、一見地味なエステサロン風なのだから。
しかし、会員だけに通知されるパスワードでログインすれば、一転して禁忌の園に様変わりする。
店舗型の高級ヘルス倶楽部。
一番の特徴は、他の店なら即座に出禁を喰らうようなハードプレイ……たとえばイラマチオなどが行える事らしい。
それでいて嬢のレベルは決して低くない。
高級店特有の、写りを計算しつくした煌びやかな写真が並んでいる。
目元のモザイク越しにも、間違いなく美人と確信できる嬢が何人もいた。
それだけに目移りしてしまう。
大体、風俗嬢の写真は加工ありきと考えるのが常識だ。
写真で期待できる嬢ほど、実物が外れだった時の落胆は大きい。

【本日出勤】の写真をしばらく眺め回した末に、俺はある賭けに出た。
一覧の左端……一つだけ写真がない嬢がいる。
クリックして詳細を開くと、そこにはこんな説明文があった。
『文句無しの抜群ルックス! 新鮮一番、思わず咥えさせたくなっちゃいます!!』
ルックスがいい……本当かは解らない。
しかし他の嬢が顔出ししている中で、一人だけ写真がない事が妙に気になった。
風俗で働いている事を知られたくない、育ちのいい娘なのかも。
あるいはこれも罠で、とんでもなく残念なルックスの娘なのかも。
期待と不安が心の中で入り混じり、それでも俺は期待の方に賭けた。
迷った時には最初の勘を頼りに進む……それが俺の信条だ。

ホームページに記載された番号に電話を掛け、指名する。
写真のない唯一の嬢……『愛璃』を。
『えっ、愛璃ちゃん…………ですか!? どこでそれを?』
電話番の店員は、まず驚きの声を上げた。
俺がホームページで見た事を伝えると、受話器から店員の気配が遠ざかる。
『…………おいおい、なんでもう愛璃ちゃんの写真載ってるわけ?
 お客さんが見たって言ってんだけど。マズいよー、誰だよ更新したの』
別の従業員に呼びかける声が遠く聴こえる。慌てるあまり保留にし損ねたという様子だ。
その瞬間、俺は確信した。この愛璃という嬢は、やはり特別なのだと。
「愛璃ちゃんで、お願いします!」
俺が語気を強めて告げると、通話状態である事に気付いたのだろう、店員の息を呑む声がする。
その後はしばし、困惑したような唸りが聴こえていた。
「是非!」
俺はさらに押す。ここが交渉時だ、プレミア嬢を何としても指名するのだ。
すると数秒の沈黙の後、ついに小さな溜め息が聴こえてくる。
「…………わっ……かりました、愛璃ちゃんですね。
 ただ言っときますけど、あんまりサービスの方は期待しちゃ駄目っスよ。
 一応研修はしたんですけど、正直まだ接客向きの態度じゃなくって……。
 指名料はオマケしときますんで、そこんとこ大目に見てやってください」
まるで腕白娘を紹介する親のように、店員は声を潜めてそう告げた。





店に着いたのは、予約時間である16:00より30分も前だった。
当然、時間までは1階隅の待合室で待機するのだが、その道すがら……俺は聞いた。
「おごぉお゛ええ゛…………ッえ゛ぉ、おお、っご…………!!」
凄まじい、えづき声。
普通のフェラチオではまず出ない、AVの中でしか聞いたことの無い声。
それが間違いなく、個室から漏れている。
俺は思わず足を止めた。
しばらくえづき声が繰り返された後、飲み物に噎せたような鼻水の音が3度。
そして、げほっ、ぇほっという激しい咳き込みが続く。
「ホラ、何やってんの。駄目だろ離しちゃ」
いかにも変態親父という感じの声が、咳の音に混じった。
咥えた物を離した事について叱っているのだろう。
もはや疑う余地は無い。
この薄いドア一枚隔てた向こうでは、俺が夢にまで見た、生のイラマチオが行われているんだ。
俺は、早くも逸物が硬く勃ち上がるのを感じた。待ち時間の一秒一秒がもどかしかった。

そして…………ついに夢の時間が来る。
螺旋階段を上がって2階へ。左手突き当たり、フリルだらけのカーテンを越えれば楽園がある筈だ。
ところが。
 ――――しまった!
部屋へ一歩足を踏み入れた瞬間、俺は反射的にそう感じていた。
嬢……“愛璃”がブサイクだった訳じゃない。というより、容姿を確認する間さえなかった。
『間違って、女子校生の部室に入ってしまったような錯覚』
俺の全身を支配していたのは、まさにそれだ。冷や汗が背中を伝う。
しかし、一呼吸置いて俺は落ち着きを取り戻した。
よくよく室内を見れば、ありふれたヘルスの個室だ。
オレンジ色の光に彩られ、ダブルサイズのベッドが圧倒的な存在感を誇る小部屋。
女子校生の部室とは似ても似つかない。
ただ、ベッドに腰掛ける愛璃に視線を戻した時、俺は錯覚の理由を理解した。
そこにいたのは、疑う余地も無い完璧な『女子校生』だったからだ。



愛璃はブレザー型の制服を身に着けていた。
ヘルス倶楽部で、制服がコスチュームとして取り入れられている例は珍しくない。
ただ、愛璃のそれはコスプレという風ではなかった。
駅で立っている本物の女子校生を見て、制服のコスプレだとは思わないように、
彼女の制服姿はあまりにも違和感がなさすぎた。
使用感というのか、妙に着慣れている感じがする。
顔立ちもどこかあどけなさを残しており、いよいよ本物の女子校生らしい。
近年は、風俗店が『本物の未成年』を雇って騒ぎになるケースがあるが、もしやこれも……と疑うほどに。
「何?」
あまりにも顔を凝視しすぎていたのか、愛璃は憮然とした様子で告げた。
この態度もまた、先ほどの錯覚の要因だろう。
この愛璃という嬢、常に妙なプレッシャーというか、パリッとした雰囲気を放っているのだ。
それはまさに、高校の部活動で感じられる類のものだった。

俺は嫌がられるのを承知で、改めて顔を注視する。
初めて意識的に見るその顔は、正直、予想を遥かに超えるものだった。
アイドル級。甘い評価でなく、はっきりとそう言える。
コンビニで週刊誌の表紙を飾っていれば、思わず手に取ってしまう。
背中まである黒髪は艶やかで、頭頂部付近の光の輪が印象的だ。
ただ、万人向けとは言い難いルックスだった。
表情が厳しいからだ。
明らかに、こちらの事を警戒あるいは軽蔑している。
眉根は寄り、吊り目気味な瞳はくっきりと開いたままこちらを見据え、口元にも緩みというものがない。
実際、目力は相当なものだ。気の弱い人間なら、2秒間視線を合わせることすら困難だろう。
ただし、俺のような変態にとっては大好物だ。これほどルックスのいい少女に睨まれていると、それだけで興奮できる。

俺はゆっくりと愛璃の方に歩み寄り、ベッドに腰掛けた。
そして愛璃の肩に手をかけてキスを迫る。
しかし、愛璃はにべもなく顔を背けてしまう。その先に回りこんで再度キスを申し入れても、同じこと。
あくまでキスを拒否するつもりらしい。
念の為言うと、ホームページには『即尺、即キス大歓迎!』とあったのだ。
どうやら接客態度がなっていないのは本当らしい。
とはいえ、俺の興奮は些かも冷めない。むしろその冷たい態度が、いよいよ俺の嗜虐心を尖らせていくようだ。



しばしキスを拒絶された後、俺は仕方なく愛璃をベッドに押し倒す。
そして、一枚ずつ彼女の制服を脱がしにかかった。
当然というべきか、愛璃はその時にも抵抗の意思を見せる。
「俺は客だぜ」
そのたび、俺はそう囁いた。すると、愛璃の抵抗が一旦収まる。
さすがにヘルスで働く以上、裸になることを仕方ないとは思っているようだ。
とはいえ、最後のシャツを脱がす瞬間や、パンツのゴムに手を掛けた瞬間にはまた抵抗を見せる。
結局、服を脱がしきるまでに、俺は10回以上も『俺は客だ』と繰り返すハメになった。
その苦労の甲斐あって、とうとう愛璃の肢体が露わになる。
本物の現役女子校生ではという疑念は、俺の中でさらに大きくなった。
身体が本当に瑞々しい。
普段俺が指名するヘルス嬢とは、まるっきり肌ツヤが違う。
オレンジの光の中でも解る、淡い桜色だ。腹部の肌を見ているだけで勃起の感覚が来る。
体型は、腰のくびれも魅惑的なスレンダー型。
けれども乳房のボリュームだけはかなりあり、男である俺の手でも掴むのがやっとのサイズだ。
D、いやEカップか。俺は脳内でそう当たりをつける。

「いい身体してるね。何かスポーツとかやってるの?」
俺は軽く愛璃の身体に触れながら尋ねた。
「まぁ」
愛璃は素っ気無く答える。
「何やってるの?」
「日拳」
2度目に返ってきた答えで、俺は正直少しだけ引いた。
日拳……略さず言うと日本拳法。
直突き(ストレート)の強烈さで知られる、実戦派格闘技だ。
防具をつけて練習するので顔や体に傷がつかず、女性向きといえば女性向きなのかもしれない。
俺は一瞬愛璃の身体から手を離しかけたが、ここで退いては男が廃る。
「へぇ、凄いね」
俺は平静を装いつつ、いよいよ愛璃の肉体を弄り始める。
愛璃の視線が露骨に鋭くなっても、男の意地で怯えは見せない。



見た目通り、愛璃の肌触りは最高だった。やはり本物の女子高生では……3度そう思うほどに。
ボディラインはいかにも女の子で、一見格闘技をしているようには見えない。
ただ、腕を軽く掴むとやはり違和感があった。
力瘤のできる部分の逆側……二の腕の下部がやや発達しているようだ。
太腿にも一般的な女性より若干の厚みがあり、弾力もあり、下半身の力はかなり強いものと思えた。
これらが、日拳をやっている人間の特徴なのだろうか。そう思いつつ触ると、下心を抜きにしても興味深い。
「触り方がキモいよ」
下心抜きに、と思った矢先、愛璃が言った。
氷のような視線、氷のような口調。たまらない。
俺はいよいよ嬉しくなり、愛璃の背後に移る。そして長い黒髪に鼻を埋めながら、乳房に手を回す。
「ちょっ……と」
愛璃は不機嫌そうな声を発しながら、やおら俺の手首を掴んだ。
格闘技をやっているだけあって、相当に力が強い。
俺もかなり力を込めているはずなのに、簡単にぐいと外された。最も、そういうコツがあるのかもしれないが。
「俺は客なんだぜ」
仕方なく、俺は魔法の言葉を囁きかける。
すると、俺の手首を掴む愛璃の手が強張った。そして数秒の躊躇の後、ゆっくりと指が開いていく。
俺は遠慮なく幸せを堪能にかかった。

一時的とはいえ、すっかり大人しくなった愛璃の髪を背後から嗅ぎ、乳房を揉みしだく。
きめ細かい黒髪の内側からは、とてもとても良いシャンプーの匂いがした。
俺は全く知らない類のシャンプーだ。女の子は一体どこで、こういうシャンプーを見つけるんだろう。
乳房もまた極上だ。若干の硬ささえ感じられる、張りたっぷりの乳房。
俺はその芯の残った乳房を揉み解すように、無遠慮に乳房を揉み続ける。
上下左右に大きく揺さぶり、乳首を指先でこねくり回し。
遠くにある風呂場の姿見にも、ボリューミーな乳房の乱れようがはっきりと映っている。
「どう、気持ちいい?」
俺が尋ねると、姿見の中で真一文字に引き結ばれていた愛璃の唇が開く。
「うざい」
紡がれたのは、たったのその一言。
あくまで一呼吸の範囲内でしか会話をしないつもりなのか。
その生意気さは…………俺にとって最高だ。
俺はいよいよ興奮し、愛璃の片腕を高く上げさせる。そして晒された脇の下を、これ見よがしに嗅いだ。
「…………っ!」
露骨に眉を顰めて嫌そうにする愛璃。その顔が、たまらない。
もっと嫌がられたいという、倒錯的な気持ちが沸き起こってしまう。



しばしのスキンシップの後、シックスナインの体勢に入ってからも、愛璃の態度は相変わらずだった。
俺が下になり、愛璃の秘裂を舐める。熱心に。
上になった愛璃は、勃起した俺の逸物をしゃぶる。いかにも気乗りしない様子で。
フェラチオというレベルにすら満たない、緩慢かつ無気力なしゃぶりだ。
上から密着してくる愛璃の肉や、左右非対称とはいえ充分に綺麗な秘裂の味は素晴らしい。
しかし、肝心な嬢の奉仕が杜撰では生殺しというものだ。

俺は無気力な嬢に罰を与えることにした。
この店では様々なSM道具が、無料オプションだけでも色々と用意されている。
その中の一つ……鼻フックを取り上げて愛璃に見せ付ける。
「どう使うか、解るよね」
俺が言うと、愛璃は予想通り表情を険しくする。
険しいが、それでも充分に愛嬌のある顔。それを今から、醜く壊すのだ。
フェチな人間として、これに興奮しない訳がない。
「ンあ゛っ……!!」
勢い良く鼻フックで吊り上げると、愛璃は短く呻いた。
鼻腔は見事な逆三角に変形し、鼻頭は醜く皺を寄せて潰れ、数秒前までの美貌が跡形もない。
なんて罪深いんだろう。俺は胸の中にゾクゾクと沸き起こるその考えに酔いしれた。

ブタ鼻を虐めるのは、想像以上に愉しい。
これでもかというほど執拗に鼻腔の内外を嘗め回し、俺の唾液まみれにする。
指で鼻を浅く穿り回し、その後綿棒やこよりを使って、気が済むまで鼻腔の深くを弄くり回す。
愛璃は凄まじい目力で睨んできていた。
さすが格闘技をやっているだけあって、割とマジで怖い。
ただその瞳も、鼻腔を弄くり回すうちに細まり、痙攣し、耐え難い苦しさに歪む。
かひょっ、ぁひょっと情けない声を何度も喉の奥から絞り出し、やがて目頭から大粒の涙を零す瞬間は最高だった。
軽く10分以上は苛め抜いただろうか。
最後の方には、愛璃の鼻はよく拡がったまま病気のように痙攣するようになっていた。
その頃には鼻水の量もそれは凄まじく、本来は整っている愛璃の鼻から下をグズグズに汚していた。
俺はその無残な姿を堪能しつつ、さらに道具を追加する。
ホワイトヘッド開口器。口を大きく上下に開いたまま固定できる、医療用の道具だ。
口を開きやすい代わりに外れやすくもあり、固定するためには頭後ろに回すゴム紐が必須でもある。
さすがにその辺りは良く考慮してあり、ここのオプション用開口具もゴム付きだ。

口を大開きにさせたまま、俺はしばし愛璃の舌を弄んだ。
愛璃の舌は、他の誰でもがそうであるように生暖かく、程よい弾力を持ちながらも柔らかい。
指で扱くと、身を捩るように指の間で踊り狂う。
口を閉じられないため唾液は垂れ流しになり、俺の手の平から零れては滴っていく。
俺は時々舌を離し、手首を返しながらしとどな唾液を舐め取った。
無味無臭のはずの唾液が、目の前の美少女のものだと思って舐めると媚薬のように感じられる。
それを飲み下した瞬間、俺は自分の中の熱さを堪えきれなくなる。
気付いた時には、痛いほどに勃起した逸物を、開いた愛璃の口内に押し込んでいた。
小さく腰の辺りが圧迫されている。
事態を把握した愛璃の抵抗だろうが、俺の腰を止めるには至らない。
俺は愛璃の艶やかな黒髪に指を絡ませ、深く逸物を咥え込ませた。



シックスナインの時とは比べ物にならないほど、逸物が深く入り込んでいるのが解る。
口を目一杯開いていてもなお、口内の生暖かさが伝わってくるのが新鮮だった。
はっ、はぁっ、という吐息も正面から亀頭をくすぐる。
その中で、俺は逸物の抜き差しを繰り返した。
なるべく奥まで突くようにしつつ、どこまで入るのか試すように抜き、挿す。
8回目の試みあたりから、逸物の先に喉の奥まりの感触がしっかりと伝わるようになってくる。
「んがカっ、えぁ゛…っハァ、ハァ、ハァッ………ぁえあ゛っっ…………はっ、ハァッ…………!!」
犬のように荒い呼吸に混じり、愛璃のえづき声が漏れていた。
涎も垂れ流しになっている。口を閉じられないので、止める術がないらしい。
鼻も豚のようで、実に惨めな有様だった。
強気な娘だ、内心では相当な屈辱を感じている事だろう。
実際、最初の頃は例の鋭い眼光で睨み上げてきていた。
ただそれも疲れるのか、数分した頃には目を細め、視線を斜め下に投げ出すようになってしまう。
苦しさからか、屈辱からか、その細まった目尻からは時おり涙の雫が伝い落ちる。
俺はそれらすべてをたっぷりと愉しんだ。

その後に、俺は愛璃の開口具と鼻フックを取り除いた。
愛璃の可愛らしい頬には、くっきりと開口具の痕が残っている。鼻も真っ赤だ。
「ぷっ、ぷっ、ぺっ!!!」
すぐに愛璃は、口内のものを吐き出しはじめる。
俺の先走りの汁でも吐こうというのだろうか。
俺はそんな愛璃を視界の端に捉えつつ、三つ目の道具を手に取った。
開口マスク。
先ほどの開口具とは違い、完全なSM用の道具だ。
鼻から下を覆う黒いラバーマスクに、一箇所だけ円筒状のリングが嵌め込まれている。
そこへ逸物を差込み、強制的に咥え込ませるという仕組みだ。
「ほら、咥えろよ」
俺はマスクを裏返した状態で愛璃に近づけ、リングを口元に押し付けた。
「やあっ……!」
愛璃は拒絶の言葉を口にしようとしたが、まさにその口の形が、リングを嵌め込むのに最適だ。
俺はすばやくリングを口内に押し込み、マスクを装着させる。
「うっ、うう゛う゛っ…………!!」
愛璃の非難は、すぐにくぐもった響きに変わった。
前の開口具より、声を遮る効果が高いらしい。
俺はまた新しい興奮を覚えながら、黒マスクの穴へと逸物を潜り込ませていく。



今度の抽迭は実にスムーズだった。
さっきは口を大きく開かせていた分、挿入する角度を工夫しなければならなかった。
ところが今回は、ただリングの中に突っ込むだけだ。何の迷いもない。
口内自体も、さっきより締まりが良い。
逸物の先が喉の突き当たりに届くと、漏れなく口粘膜が肉幹に纏いついてきて堪らない。
全く喉を突かなくても、狭まった口内の生暖かい呼吸が、はぁはぁはぁはぁと逸物に吹きかかる。
それはごくごく弱いフェラチオのようなもので、くすぐったい快感があった。
射精には至らないにせよ、萎えない程度のクールダウンにはもってこいだ。
そして、何より。
「んごぉおお゛ぇええ゛っ、おうえ゛っ…………!! んごっ、お、あお゛おぉっ、お゛、お゛っっ…………!!」
このえづき声だ。
一切遠慮の必要がなくなった俺は、愛璃の頭を両手で抱え込み、自分の腰に押し付けている。
もう喉奥を突くなんて事は当たり前。喉奥の窄まりを突破し、さらにその奥の空間に亀頭を滑り込ませる事もある。
凄まじいえづき声は、だいたいそこから亀頭を抜く瞬間に上がった。

そして興奮する要素は、触覚、聴覚のほかにもう一つ。視覚もある。
開口具と鼻フックの時は、意図的に愛璃の相好を崩していたが、今度は素の顔が見える。
目を固く瞑って、額にいっぱい汗をかいて咥えこむ愛璃の顔は、もう反則的としかいえないほどに可愛らしい。
いつの間にか、俺の足を押しやろうとする抵抗もすっかり弱まっていた。
時々反射的にそういう動きをするものの、大抵は俺の膝上を小さい手で掴んでいるだけだ。
イラマチオを受けている最中は暴れるなと、店から指導を受けているのかもしれない。
あるいはあまりの辛さに、呆然としているのかもしれない。
いずれにせよ好都合。
俺は幾度も幾度もリングの中で逸物を前後させ、時には引き抜いてもみた。
リングから、まず唾液で濡れ光る逸物が現れ、それを追うようにして真っ白な唾液が零れ落ちる。
愛璃自身は虚ろな瞳を開いたまま、俯きがちに喘ぐ。前髪や額から汗が次々と噴きだし、滴る。
その色っぽさを堪能すれば、また咥え込ませる。
それを繰り返した。その果てに、俺の射精感は刻一刻と高まっていく。
ここ数年来なかったほどの、膨大な射精の予感がする。
長く楽しみたい思いは、ついに射精欲求に負けた。
俺はいよいよ激しくストロークを繰り返しながら、喉の深くでぬるい空間へと精をぶちまける。
予想通り、凄まじいまでの射精だ。逸物の内部が幾度も幾度も脈打ち、精を吐き出していく。

たっぷり10秒は射精した後に、俺は逸物を引き抜いた。
愛璃自身の唾液でべとつくリングを通り抜け、冷ややかな外気の元へ。
「うぇ、えっ…………」
その直後、俺の放った大量の精液が愛璃の口から吐き出される。
可愛い顔から精液が吐き出される様子は、本当にいやらしい。
喉奥まで咥え込まされたのが、よほど苦しかったのだろう。
愛璃は薄っすらと涙を浮かべ、熱に浮かされたような瞳で前方を眺めていた。
「大丈夫か?」
さすがに心配になった俺は、マスクを外しながら愛璃に呼びかけた。
けれども反応はない。最初の頃の、ピリッとした雰囲気が跡形もない。
やりすぎただろうか。そうも思ったが、店で許可されている範囲で愉しんだまでだ。
俺はそう割り切り、せめて時間一杯愉しませて貰おうと、今度は道具なしで逸物を咥え込ませる。
脱力した愛璃を人形のように使い、頭を掴んで前後させる。
舌も動かない。拒絶もない。
けれどもその空しい一人遊びは、それから数分もしないうちに、180度変わることになる。



最初に感じたのは、逸物が握りこまれるような感触だった。
ぎゅうと締まるような感覚。
「うわっ!?」
何事かと驚いている間にも、状況は進行していく。
逸物に舌が絡みつき、口内粘膜が纏わりつき、尋常でない吸引がなされる。
じゅくっ、じゅぶっという水音が部屋に響き始める。
「あ、うわぁあああっ!!?」
俺は思わず叫んでいた。快感があまりに大きい。
先ほどまでのイラマチオも、人生初の劇的な体験だった。
ところが今のこのフェラチオは、その記憶をさらに上書きするほどに凄まじい。
『腰が抜ける』という感覚を、俺は生涯初めて、身を以って体験していた。
とても立っていられない。
縋るようにベッドに座り込み、膝立ちでなお逸物に吸い付いてくる愛璃の玩具と化す。
「ん、んふっ…………ん、んふぅん…………」
愛璃は小鼻から愛らしい息を漏らしながら、ただフェラチオに没頭していた。
とろんとした目の様子こそマスクを外した時と変わらないが、それ以外の全てが一変している。
「あああああああぁああっ!!!!!!」
俺はまた叫んだ。快感が強すぎて、叫ぶ以外の行動が取れない。
格闘技の熟練者に殴られ続ける間は、ただ叫ぶしかないように。
そうだ……これは、暴力での一方的な蹂躙と同じだ。
「ヤ、やぇっ…………ちょっ、ほんと、に…………!!」
俺は自分でも情けないと思える声を出していた。
大量射精したばかりの、鈍痛さえ覚える逸物から、問答無用に搾り取られる苦痛。
それは声を裏返すに充分だった。

何分もっただろう。いや、何十秒堪えられていただろう。
俺はもう堪らず、一度出したにも関わらずかなりの量を射精していた。
射精の最中に声は出せなかった。歯を真一文字に食い縛り、バーベルを上げるような気迫で射精していた。
さらに、それでもなお愛璃は止まらない。
射精した尿道の中身を、異様な吸引力で吸い上げ始める。
射精に次ぐ射精、その直後の尿道責め。これには、俺の内腿がビクンビクンと痙攣を始めてしまった。
「おい、おい!! やめろよっ、休めよ…………!!」
俺は叫んだ。愛璃は何かに憑かれたように、一心不乱に精液を吸い上げている。
やばい、やばいやばい。
俺が脳裏にその言葉を繰り返し始めた頃、唐突に吸引は止まった。
「………………あれ………………?」
気の抜けるような愛璃の声が発せられる。
その後、彼女は自分の精液まみれの手の平を見やり、目の前の逸物を眺めて……
やってしまった、と言わんばかりに、大仰な溜め息を吐いた。



「いっやぁ、あれは気持ちよかった。最高だ!!」
俺は愛璃に賞賛の言葉を送る。
本心の一部でもあったし、そう言えば愛璃が困ると解ってもいるからだ。
「うるっさいなぁ、もう…………。
 あくまで、仕事だからやったんだからね。最後の最後にさぁ」
愛璃は、鋭い目つきで俺を睨み上げながら告げる。
纏う雰囲気は最初と同じ。
けれどもなぜか今は、まるで違って思えるのが不思議だ。
「あ、でもノリノリでやってたとか誤解招きそうなこと、店員にとか、ホムペの掲示板で言わないでよ?
 もし言ったら、次から絶対NG客にするから!」
憤慨した様子でまくし立てる愛璃の頭を、俺は優しく撫でた。そういう気分だった。
「じゃあ、言わなきゃまた会ってくれるんだよな?」
からかうように俺が言うと、愛璃は唇を真一文字に引き結ぶ。
しかしその膨れ面からは、ついに否定の言葉が出てこないのだった。


                        終

2014/05/11
20:48:11
※女同士のいじめ物。ディルドーイラマ嘔吐あり。


控え室でカレンダーを捲りながら、竹林奈々は溜め息をついた。
4ヵ月。
風俗業界に足を踏み入れてから、もう4ヵ月だ。
「奈々もすっかりベテランだよね、ここの」
ソファに並び座る同僚が笑った。
「だよね」
奈々も自嘲気味に笑い返す。

女性向けデリバリーヘルス、『花蜜蝶』。
奈々がここで働き始めた原因は、恋人である篤志の借金だ。
電話越しに聞いた悲痛な声を、奈々は今でも忘れられない。
「に、二千万……だ」
借金額について、篤志は力なくそう答えた。
青年実業家としての成功を夢見た結果だ。
才覚はある男で、奈々は友人達からこぞって『良い玉の輿に乗った』と持て囃されたものだった。
その彼でも、時代の荒波を読み切ることは出来なかったらしい。
「別れてくれ、奈々。お前を巻き込みたくない」
電話口の篤志は、いよいよ弱りきった声で告げる。
それを聞いた瞬間……奈々は、憤った。
「はぁ、別れる!? あんた、何言ってんの? そんな借金してて、食事とかどうすんのよ。
 自炊だって碌に出来ない癖に、まさか、毎日カップラーメンなんて食生活送るつもりじゃないよね?
 私の心配なんかしてる場合じゃないでしょ。自分の心配しなさいよ、自分の!」
「え、え、でも、その……」
篤志にとっては、予想外だったのだろう。随分と狼狽した声色が返ってくる。
それを耳にしながら、奈々はさらに続けた。
「借金は、私がどうにかする。二千万ってお金を、きっと稼いでみせる。
 だから篤志は、心配せずに再起に向けて準備を整えてなよ。
 30までに成功してやるって言ってたでしょ。昔からの夢なんでしょ?」
有無を言わせぬ勢いでそれだけを告げ、電話を切る。

奈々の中には意地が芽生えていた。
周りから『玉の輿』と言われ続け、その噂はどこかで篤志本人の耳にも入っていただろう。
もしも借金を理由に別れる事になれば、まさしくその噂を肯定することになる。
金を目当てに男に擦りより、金が無くなれば捨てるような薄情な女だと。
それが奈々には我慢ならない。
また、体面を抜きにしても、借金で途方に暮れる篤志を一人残す事など出来なかった。
惚れた弱みだ。恋人の乗る船が沈没するのなら、自分も最後まで同伴する。
自分がされて安心する事なら、それを相手にも。それが奈々の恋愛観だ。

以来、奈々は風俗嬢へと身を転じた。
稼ぎのいい風俗とて、二千万という金額を稼ぐのは並大抵の事ではない。
加えて、奈々は自らに一つの制約を課していた。
『篤志以外の男に抱かれないこと』だ。
これにより、もっとも稼ぎの良いソープは選択肢から消える。
キャバクラの類も、手早く稼ぐにはあまりに不向きだ。
そうして彷徨った末に辿り着いたのが、女性向けのデリバリーヘルス『花蜜蝶』だった。
顧客は女性のみなので、男に抱かれる心配はない。
またニッチなジャンルであるため、低価格競争が起きず、月間の稼ぎは高級ソープに迫る。
まさしく奈々に打ってつけの仕事だ。

しかし、その仕事内容は予想に反して過酷だった。
男に抱かれないのだから楽だ、と考えて『花蜜蝶』に登録する少女は多い。
そしてそうした少女の実に7割が、一ヶ月と続かず店を後にするという。
奈々もまた、勤務一週間でその理由を理解した。
女性用デリバリーヘルス。
その利用客の中には、むろん純粋なレズビアンもいるが、それ以上に『若く美しい女を虐めたい』だけの客も数多い。
嫁を虐める姑のようなものだろうか。
平均年齢40を超える利用客達は、嬢に対して実に陰湿な責めを繰り返す。

勤務三回目で、奈々は3時間コースの利用客に当たり、時間一杯浣腸を施された。
牛乳やグリセリン、酢やトマトジュースなど様々な浣腸をされ、実に32回に渡って、同性の前で排便を晒すはめになったのだ。
勤務七回目の客などは、4時間コースだった。
還暦を過ぎたこの老婆は、やはり時間一杯奈々を嬲り者にした。
筆を用いて陰核に怪しい軟膏を塗りこめ続け、錐状に痛々しく屹立してもなお責め続けた。
挙句には肛門にさえ指をねじ込み、軟膏を塗りこめた。
この軟膏は耐え難い痒みを伴った。プレイ終了後しばらくしても、痒みは消えない。
結局奈々は、家に着いてから翌日の出勤をキャンセルした。
そしてその夜から翌朝にかけ、自らの指であさましく陰核を潰し、肛門をかき回すこととなった。
気の狂いそうな痒みに幾度も泣き叫び、朝になって病院へ駆け込む。
そこで処方された薬によってようやく痒みは収まったが、肉体の開発は致命的なまでに進んでしまったらしい。
この次の仕事より、奈々はその濡れやすさを様々な客に指摘されるようになったのだから。


「あ、お疲れー!」
同僚のその声で、奈々はふと追憶から引き戻される。
顔を上げれば、そこには今仕事を終えて戻ってきたばかりの嬢がいる。
不機嫌そうに押し黙ったまま、ソファに座ろうとする。
しかし中腰のまま一旦動きを止め、近くにあったタオルを数枚ソファに敷いてから腰を下ろす。
まるで臀部を庇うかのように。
「あれ……智恵、まさかお尻やられたの!?」
勘付いた嬢の一人が尋ねる。智恵という少女は仏頂面のまま頷いた。
「つーかあのババア、マジありえないし。おしりに大根みたいなバイブ突っ込んでくるんだよ。
 『痛いんでやめて下さい』ってめっちゃ言ってるのにさ、若いんだから大丈夫、とか言って全然やめないの。
 んで、さっき医者に見てもらったんだけど、ちょっと切れてるんだって。もうマジ最悪……」
頭を抱える少女。
それを囲む同業の少女たちは、怯えと同情をない交ぜにした表情を浮かべている。
皆が同じ客相手に痛い目を見ているからだ。
原岡というその女性は店の得意客であり、なおかつ相当なセレブリティでもあるらしい。
そうした理由から、原岡がいくら横暴をしようと、店側は注意すらしない。
初めから使い捨てにするつもりなのか、状況が改善されないならと辞めていく嬢を引き留めもしない。
今や『花蜜蝶』に残っている古株は、その理不尽を知ってなお、他に行き場のない事情持ちばかりだ。
奈々が自嘲気味に笑った理由は、ここにある。

「……さてと、私もそろそろ行かなきゃ」
奈々は腕時計を一瞥してから柔らかく立ち上がり、スカートの後ろを軽く払う。
その所作一つとっても、周りの娘と違っていた。昨日今日入ったばかりに思われるほど、風俗臭に染まっていない娘だ。
それだけに、客から手酷く嬲られる事も多いのだが。
「頑張んなよ。ナナ」
古株仲間の励ましを受け、奈々は小さく頷きながら扉の向こうに消える。
「…………いいよねぇ奈々さん、今日は若い女の客っしょ。ババアじゃないんだ」
肛門を痛めた嬢が、ふと扉に向かって呟いた。
「でも、あの子だって楽じゃないんだよ」
古株の嬢がその言葉を諌める。
「そりゃ、若くても同じ女に嬲られるのがハズいってのは解りますけどぉ、でも」
「そういう事じゃないって!」
なおも続ける後輩に、古株の嬢はぴしゃりと告げた。
その語気に、一瞬部屋を沈黙が支配する。
少し後、ひとつの咳払いを挟んで古株嬢は口を開く。
「楽じゃないんだってば。これ、本当は秘密にしといてくれって言われてんだけどさ。
 今日、奈々を買った客ってのは…………あの娘の、高校時代のクラスメイトなんだよ」





数時間後、奈々はマンションの一室にいた。
足の踏み場もないほど散らかった部屋だ。独り身の女性にはありがちだが、趣向が妙だ。
全体として、部屋の内装がピンクで統一されすぎている。
フローリングの床とガラステーブル以外は、壁紙もタンスも椅子もカーテンも、眩暈がするほどピンク一色だ。
壁際のハンガーには、現実には有り得ない色合いのコスチューム衣装が並んでいる。
極めつけは部屋主自身の格好だ。ゴシックロリータというのだろうか、呆れるほどにフリルの付いた黒いドレスを纏っている。
その異様な世界の中、奈々は丸裸に剥かれて床に座り込んでいた。
後ろ手に黒い皮手錠で拘束され、口にも開口マスクが嵌まって強制的に口を開かされている。
そしてその口には、やはりピンク色をしたディルドウが送り込まれていた。
ディルドウを操るのは、ゴスロリ姿の女……麻美だ。
格好こそ派手だが、顔立ちや体型は野暮ったい。

「ごぉおお゛おええ゛っ、んも゛おおぉおお゛お゛え゛っ!! え゛お゛っ、お゛っ……っご、ォ…………ごヶっ。
 いおゃお゛ッ…………おぉお゛おぉ゛おお゛え゛っ、んお、おぅっお゛、おぉぉ゛お゛お゛ぇえ゛え゛っ………………!!!」

凄まじいとしか言いようのないえづき声が繰り返される。
若い女の声とは到底思えず、人の声なのかすら定かではない。
ただ、跪いた女の口にディルドウが送り込まれるという状況から、えづき声だと判別できるだけだ。
奈々の黒髪は後ろでポニーテールに纏められていた。
彼女は高校時代、動きやすさからその髪型にしている事がほとんどだった。
麻美はその由来ある後ろ髪を左手で鷲掴みにし、奈々の顎を上げさせながら右手でディルドウを前後させる。
喉奥を責める間、一言も口を利かない。
えづきながら悶え苦しむ奈々を観察しつつ、順手で緩々とディルドウを送り込み、または逆手に持ち替えて深く咥え込ませる。
その容赦のないイラマチオは、相当な時間に渡って続けられているのだろう。
奈々の口からは、明らかに唾液ではない、生々しい粘性を持つえづき汁が溢れていた。
それは奈々の胸元を異様なほど濡れ光らせ、膝元から床にかけて液だまりを作る。
挙句にはディルドウを伝って、麻美の手の平にまで絡み付いていた。
しかし、麻美がそれを気にする素振りはない。
何かに取り憑かれたかのように、延々と、淡々と、奈々の喉奥を抉りこむ。
時には横から、時には正面から、奈々の表情を観察しながら。

やがて、麻美はディルドウの持ち方を改めた。
それまで側面を順手逆手に持って操っていたものを、とうとう鷲掴み……ディルドウの尻部分を手の平で覆うようにする。
その状態で喉へと突き込めば、その挿入の深さはそれまでの比ではない。
手が邪魔をしていた持ち手の一部までを、易々と咥え込ませることができるのだから。
「お゛おぉお゛お゛ぅううお゛…………っ!!!!」
当然ながら、奈々は堪ったものではない。首元から顎にかけてが痙攣しはじめ、目が見開かれる。
黒目がちな瞳は、赦しを乞うように真美を見つめたが、麻美はやはり淡々と喉奥を抉るばかりだ。
「ん、ごぉっ………………!!」
その果てに、当然のごとく奈々は嘔吐する。
マスクの開口具部分から薄黄色の吐瀉物があふれ出し、フローリングに湿った音を立てる。
マスクの下からも一部の吐瀉物があふれ、顎から滴っていく。
「あ、吐いちゃったんだ。」
麻美はその惨めな様子を観察しながら呟いた。
非難か、問いかけか、それともただ事実を述べただけなのか。それすら判別できない、ボソボソとした声だ。
実に奇妙な娘だった。その奇妙さは、ディルドウを引き抜き、開口マスクを外して奈々を再度観察する所からも窺える。
「はっ、はぁっ、はあっ、ぜ、ぜひゅっ……はぁっ、はっ、はっ…………」
眉根を下げて早いペースで喘ぐ奈々は、静かに観察する麻美を不気味そうに見上げた。
男ならばまだ解るが、女が同じ女の喘ぐ顔を見て何が面白いのだろうか。


 
麻美は、高校2年から3年にかけて、奈々と同じクラスにいた生徒だ。
いわゆる『根暗なオタク女』であり、友人といる所を見かけた者はいない。
常に教室の机に一人座っており、休み時間は机に突っ伏して時間を過ごしているのが常だった。
虐められていた訳ではない。
奈々を中心とするグループが、虐めなど見かけようものなら即座に担任に報告するからだ。
何しろ奈々は、苗字の竹林(たけばやし)の読みを変え、密告を意味する『チクリ』とかけて『チクリン』と陰口を叩かれていたほどだ。
そんな奈々がいるため、彼女のクラスだけは虐めもなく和やかだ。
にも関わらず、麻美は常に独りでいた。
そんな麻美を見かね、奈々はグループ分けなどがあるたび、麻美を自分の所へ誘った。
しかし麻美はそれすら跳ね除け、どこか軽蔑でもするような視線を寄越すばかりだ。
教室で談笑している最中にも、奈々は麻美の黒い視線を感じる事があった。
振り返ると素早く視線を逸らすのだが、直前まで奈々の背中を見ていた事は間違いない。
常にグループの中心にいる奈々を羨むように、あるいは疎むように。
それは結局、卒業式を終えて校門を去る瞬間まで続いていた。

野中麻美。
さほど珍しい名前でもないため、初めて麻美の名が顧客リストに現れた時も、奈々は彼女だと気付けなかった。
実際にマンションに呼びつけられて初めて、それがあの黒い視線の主だと判明する。
しかし、麻美は特に何を言うでもなかった。
ただ粛々と、奈々を相手に丸2時間のレズビアンプレイを行う。
濃厚なキスを交わしながら、互いの秘裂を刺激しあい、足を絡ませながらの貝合わせを繰り返す。
麻美は何も言わなかったが、ただ常に、真正面から奈々の顔を覗き込んでいた。
かつての級友との見つめあい。奈々がそれを恥じて顔を逸らしても、その度に顎を掴んで表面を向き直させた。
その行為はやがて、奈々を異様なほどの興奮に引き摺り込む。
濃厚なキスで軽く1回、口づけを交わしながらの秘裂への指入れで浅く2回深く4回、貝合わせで2回。
実に9回に及ぶ絶頂を経験させられ、2時間の制限時間が経過した頃には、ピンク色のベッドの上で腰を小さく跳ねさせるほどになっていた。
麻美はやはりその奈々の様子を無表情に観察しながら、最後に小さく囁いたのだ。
「また指名してあげる」
奈々はその真意が全く測れないまま、ただサービス嬢として感謝の意を述べる。

それ以来、麻美は週に一度のペースで奈々を買っている。
けして安くはないはずだが、よくも資金が続くものだ。奈々はそう訝しむが、支払いが滞ったことはない。
そしていざ部屋へ招き入れれば、責めは日に日に過激さを増していく。
まるで、奈々の壊れゆくさまを見ようとでもいうかのごとく。
奈々は不安に駆られた。麻美の元へ行きたくないと思ったことも一度や二度ではない。
しかし、店の規定として客の拒否は認められない上に、顔見知りであるという恐ろしさもある。
もしも麻美を拒絶して逆鱗に触れたならば、きっと恐ろしいことになる。奈々は、漠然とそう感じていた。



最近になって、麻美は奈々に高校の頃の事を聞くようになった。

「……じゃぁ、次…………2年の10月頃かな。クラスでさ、オオムラ、オオムラって皆が口揃えて言ってたでしょ。
 あれ、何なの。私さ……友達いなかったから聞けなくて、でも気にはなってたんだよね。
 いっつも友達と一緒にいたあんたなら、知ってるんでしょ…………教えて」
麻美は、奈々の陰核にマッサージ器を押し当てながら話しかける。
注意して聞かなければ、独り言と思えるような抑揚のない喋りだ。
「あ……あっ、あっあ、あっ…………!!」
奈々は激しく喘いでいた。
ピンク色のベッドに横たわったまま、片足首を掴まれて開脚させられ、陰核と秘裂にマッサージ器を宛がわれているのだ。
すっきりと絶頂できるのであればまだいい。
しかし、行われているのは延々と続く生殺しだった。
マッサージ器を当て続け、達しそうになれば離す。それを、もう40分以上にも渡って延々と繰り返している。
ベッドに敷かれた寝小便用マットは、すでに限界近くまで変色している。
また奈々自身も、足首を掴まれていない方の脚の付け根が、おかしな痙攣を起こし始めている事に気付いていた。
間違いなく、女にとっての限界……その一つの嶺に迫っている。
その中でも、麻美は容赦なく質問を投げかけてくるのだ。
「あ、あっ…………に、に年の、じゅ、じゅうがつ、頃はぁっ…………、『朱花の巨室』がやってたからぁ…………」
「何それ。聞いたことない」
「ええっ…………!? し、視聴率、最高で31%の、あの日曜ドラマよ。社会現象だったでしょう」
「いや、知らないし。アニメならともかく、日本のドラマとか見ないから。で、それとオオムラがどう関係するの」
「ん、んく、ぅっ……ふぅっ…………!! そ、そのドラマの主演が、おっ、大村康治だったのよ!!」
「いや、それも全く聞いたことないし。周知の事実みたいに言うのやめてくんない?」
麻美は若干の苛立ちを含ませて呟き、マッサージ器の強さを上げる。
「くぁああおぉおおっ!! ああっ、あうあああうあははあっっ!!!!」
瞬間、奈々の反応が激しくなる。麻美の掴む足首も暴れだし、麻美の手の平との間の汗をにちゃにちゃと鳴らした。
その反応を無表情に観察する麻美は、一旦マッサージ器を秘裂から放し、出力をかなり下げて会陰部に押し当てる。
「ん、ふぅっんんんんっ…………!!!」
一度絶頂の淵の淵にまで押し上げられた奈々は、一転してのもどかしい刺激に腰をうねらせる。
眉根を寄せて下唇を噛む表情は、同性から見ても可愛いと言われるものだろう。
しかし、麻美の表情に変化はない。
「…………じゃあ、次ね。3年の春休み明け。これは、ハッキリ覚えてるんだよ。私が机に突っ伏してるとさ…………」
麻美は淡々と高校時代の記憶を語り始める。

それは、単に思い出話に花を咲かせるためのものではないと、奈々は気付き始めていた。
あくまでも、自分とお前はクラスメイトなのだ。お前はクラスメイトに辱められているのだ。
そう自覚させ、この上なく惨めな気分に陥ること。それこそが目的なのだろう。
事実として奈々は、快感の弱まるふとした瞬間に、舌を噛んで死にたいほどの恥辱を覚えるのだった。


 
「あ、Skypeきた。ちょっと出る」
麻美は、奈々の両足首を椅子に縛り付けながらそう告げた。
手首は椅子の背に回す形で後ろに拘束してある。
その上で秘裂にバイブレーターを挿入し、ゴムショーツを穿かせれば、奈々は責めから逃れられなくなる。
「えっ!? ちょっ、Skypeって…………!!」
奈々は状況を把握して抗議しようとするが、それすらボールギャグを噛まされて封じられてしまう。
「えあっ! うーっ、うううっ、うえあ、あ、あえぇっ!!!」
穴の空いた球に遮られ、非難の声は情けない呻きに変わった。
麻美はその様子を一瞥してパソコンに向かい、ビデオチャットを起動する。
画面の向こうに数人の男が映った。いずれもオタクそのものという容姿の三人組だ。
その男達は、はじめ死んだ魚のような瞳で気だるげな挨拶をした。
しかし麻美の後方に奈々の姿を認めると、一変して目をギラつかせ始める。
「うおっ!? あ、あれは一体!?」
「……ん、あー気にしないで。ただのペット。私専用肉便器だから」
「ひぇえー、に、肉便器! 肉便器所有でありますか!!」
興奮気味な叫びを耳にし、奈々の背筋に寒気が走った。
ニクベンキという言葉の意味が解らないが、良からぬ事であるのは空気で窺える。
「ううっ、うううっ!! うううんんんううっっ!!!」
奈々は必死に身を捩った。
あの男たちには、全てが見えてしまっている。
丸出しの乳房を初めとする全身が。
椅子の足に両足首を繋がれ、大開脚した股座が。
秘裂のバイブレーターを押さえ込むため、歪な形に張ったゴムショーツが。
金を払っている顧客の麻美にならば、この姿を晒すことも仕方ない。しかしそれ以外の男に晒すのは約束が違う。
もしも、もしも、あの男達がこの映像を流出させでもしたら。そしてその映像が、篤志の目に触れでもしたら。

奈々はそれを危惧する余り、激しく全身を捩り続ける。
しかしその行為により、秘裂の中を激しくバイブレーターで擦る結果となる。
「っっっ!!!!!」
その瞬間、凄まじい快感が奈々の脊髄を駆け上った。
もともと焦らしに焦らしを重ねられていたところだ。そこへ来ての膣内への刺激は、甘すぎる刺激だ。
さらに、刺激はそれだけではない。
麻美は、奈々には全くわからない話題をビデオチャットで交わしながら、時おり指でボタンを押し込む。
それがバイブレーターの遠隔スイッチである事はすぐに解った。
麻美の指がボタンを押すたび、バイブレーターが唸りを上げる。強さは何段階もあるようだ。
この快感は……生殺しを続けらたものにはまさしく“狂おしい”。
「もごぉおおお゛お゛お゛っっ!!!!!」
この時ばかりは、奈々は口に咥えるボールギャグに感謝した。ギャグがなければ、もっと遥かにあさましい声を上げる確信があった。
麻美のビデオチャットの相手は、気もそぞろな様子だ。
一応会話を成立させてはいるらしいが、意識はほぼ奈々の方を向いていた。
普段女との接点がないせいか、その視線は鳥肌が立つほど怪しい。
「……おいおい、あの子、アソコがもうドロドロだよ」
「ああ、ち、乳首も、あれ……勃ってるんだよな。無修正のでも、あんな乳首の形じゃなかったぞ」
「ひょっとして、すげぇ可愛いんじゃね?」
「絶対ノーチェンジだってあれ。顔面偏差65くらい」
そうした会話が密やかに交わされ、全てが奈々の耳に入ってくる。
その状況がまた、奈々自身にも理解しがたいほどに身を昂ぶらせた。
見ないで、見ないで。そう心で叫びながら身を捩るうち、無意識に膣の奥を締め付けてしまう。
それが3度繰り返され、そしてその3度目でちょうどバイブレーターが強い振動を見せた時。

 ( …………いく!! )

奈々は、頭の中で絶叫する自身の声を聞いた。
下腹の力が抜け、温い痺れが血管を包み、意思とは無関係に腰が跳ねるのを感じた。
ぎしっぎしっと椅子の軋む音が、とても遠かった。


 


「お願いやめてぇっ!! もぉ、やめっ……やっ、やすませてえええ゛え゛っ!!!」

悲鳴そのものの嬌声が、部屋に響き渡る。
麻美はその声を意にも介さず、淡々と極太のディルドウを奈々の秘裂にねじ込んでいた。
椅子に拘束されたままの姿勢だ。
たっぷり20分間のビデオチャットを愉しんだ麻美は、いよいよ仕上げとばかりに奈々を責め立てていた。
焦らしに焦らし、出来上がった状態の奈々を極太で責め立てる。
これで悲鳴の上がらぬ訳はない。

「ねぇ、私経験ないから解らないんだけどさ。すっごい簡単に、奥まで届くようになったよね。
 これが、『子宮が下りてきてる』って状態なのかなぁ。
 ってことは、こうやってゴリゴリしてるのって、あんたの子宮の入り口叩いてるってこと?
 ポルチオっていうんだっけ。ここ、女の身体で最大の性感帯なんでしょ、昂ぶってくると。
 エロアニメなんかだと、白目剥いて痙攣するとこだよね。ホントにそれってありそう?
 私、あのクラスだと竹林さんが一番二次元栄えするかなって思ってたんだけど。
 なんか、周りと比べても浮いてたんだよね。一人だけ、いつどこから見てもシャンとしすぎっていうか」

麻美は奈々の狂乱振りを無視し、ただ淡々と責め立てる。
まるで処刑を命じられた係官のように。

「ねぇ、ねぇって。さっきの答えてよ。ポルチオってどう?
 クリトリスは性器に刺激が来て、Gスポットは下半身全体が痺れて、ポルチオは全身に凄い電流が来るんだって。
 でもちょっと、そこまでとは信じられないんだけど。今のそれって、演技とかじゃないの? 本当?
 おーーい、聞いてる?」

麻美の呑気な小声は、恐らく奈々に届いてはいない。
麻美が問いかけても届かず、それに怒りを覚えて激しく責め立て、叫びが増してますます声が届かない。
その悪循環に陥りつつあった。
哀れなのは奈々だ。
蕩けきった子宮口を、容赦なく抉りこまれる。その度に快感の束が血管を走り、脊髄を焦がす。
頭の中はとうに白く染まっている。
常に失神寸前の状態にあり、眼球を上側に置いておくのはとても楽な状態だった。
しかし意識を手放せば、そのまま脳が快感に焼ききれる恐れがある。
そのため、飛びそうな意識を辛うじて掴まえておかねばならない。まるで荒れた海の中、船体の欠片にしがみつくように。

 (……篤志…………篤志、どこ……? 近くに来て、すぐに手を握って!
  私、こわい。いつか遠くないうちに、もう戻って来れない所まで流されそうだよ…………!)

現実感の欠如した麻美に、情けなど望むべくもなかった。
幾度も幾度も、潮吹きが起きている。
全身の痙攣が、もはやどこに力を入れても止まらない。

「あ、ああああ…………あああぁっ、んはぁああ……!!
 くぁああああっ、あお…………ああ…………あおああおあ゛あ゛っっ!!!!」

奈々の視界に、ちらりと棚が映った。そこに並ぶのは、無数の美少女フィギュア。
命のない、見目麗しいだけの人形。

奈々は着実に、それへと近づきつつあった。



                           終わり


カウンター
プロフィール

Author:燻製ねこ
2chを名無しで彷徨う流浪の物書き。
百合とアナルが主食。
強い女と性拷問も大好き。

ゆっくりしていってね!

※当ブログはリンクフリーです。

mail : kunseneko@gmail.com

全記事表示リンク

全ての記事を表示する

最新の記事
ありがたいコメント
カテゴリ
月別アーカイブ