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自作小説を掲載したり、興味のあることを語ったりするブログです。
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ブログ開設。

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23:47:38
※幼馴染NTRモノ。ハートフルボッコ注意。


俺は今でも、『幼馴染』って言葉を聞くたびに胸が苦しくなる。
ひどく苦い思い出が甦るから。

橋詰沙耶香、それが幼馴染の名前だ。
家はすぐ隣で、家族ぐるみの付き合いがあったから、俺と沙耶香はまだ赤ん坊の頃から一緒に遊んでいた。
家にいる間はお互いどっちかの部屋で遊んで、疲れたらその場で寝る。
俺が沙耶香のベッドで寝入って、沙耶香が俺の部屋へ行って寝たり、その逆もよくあった。
風呂だって毎日一緒に入ってた。
大体2人揃って泥まみれになって帰ってくるから、お互いの親にしても、自分達で洗わせるのが一番だったんだろう。
小5までは、本当に毎日一緒に入った。
「ジュンチー、お風呂沸いたって。いこー」
俺が部屋でテレビを見ていると、隣の窓から沙耶香が声をかけてくる。
ジュンチーっていうのは、俺の『純一』って名前を一部省略した呼び名だ。
小4から小学校卒業までの間、沙耶香の中では俺をそう呼ぶのがマイブームになっていたらしい。
風呂に一緒に入らなくなったのは、小5の夏。沙耶香に生理が来たのがきっかけだった。

その日俺と沙耶香は、部屋で一緒にゲームをしていた。
その途中で一旦沙耶香がトイレに立ち、しばらくしてから悲鳴が上がる。
慌てて俺が駆けつけると、沙耶香は泣きながら『血が、血が!』って俺にすがりついた。
俺ももうパニックになって、2人して泣きながら沙耶香の母親に報告に行ったものだ。
沙耶香のお母さんは、一目見て状況を察したんだろう。心配するどころか、嬉しそうに笑っていたんだ。
俺は訳がわからなくて、おばさん何笑ってんだよ、とか叫んでたと思う。
その夜、沙耶香の家ではパーティーが開かれた。
赤飯が炊かれて、ウチの親も含めて、皆が大人になった沙耶香を祝福してた。
沙耶香は照れたように笑ってた。
俺には説明がなかったから困惑したけど、でも場の雰囲気からめでたい事らしいのは察しがつく。
ただ、その晩いつものように沙耶香と風呂に入ろうとすると、大人の皆に止められた。
まぁ当たり前といえば当たり前なんだけど、当時の俺はゴネたものだ。
でも沙耶香は逆に落ち着き払って、俺の顔を見ながら諭してきた。
その雰囲気と親たちの反応で、俺はようやく、沙耶香との関係性が少し変わったんだと理解したんだ。
もっとも、一緒に遊ぶ事自体はその翌日も変わらなかった。
もう風呂で水を飛ばしたりして遊べない事が、少し寂しいだけだ。長いこと愛用していたアヒルも、その日に捨てた。


沙耶香はルックスが良かった。
俺はへちゃむくれの幼少期から毎日見てきてるから、小さい頃はまったくそう思ってなかったが。
意識が変わったのは、小4の時、沙耶香が誘拐未遂に遭った時だ。
一人で下校している最中、沙耶香は車から降りてきた男数人に、危うく連れ去られそうになったらしい。
ちょうど目撃者がいて悲鳴を上げたから助かったけど、本当に間一髪だったそうだ。
その夜、泣きじゃくる沙耶香を囲みながら、近所の大人達は口々に自衛について話し合っていた。
その時に何度も耳にしたのが、『サヤカちゃんは可愛いから、特に……』という言葉だ。
不思議なもので、自分では別に思っていなくても、大人が口を揃えて可愛いと言っていると、俺にもそう思えてしまう。
それからしばらく、俺は沙耶香を変に意識するようになってしまった。
あんな事件の後だ。大人の見張りとは別に、俺も沙耶香と一緒に下校するよう言われたが、ろくに顔が合わせられない。
結果、沙耶香に『何か隠し事をしているのでは』と勘繰られ、喧嘩になった。
そこから仲直りした後は、俺自身も落ち着いたのか、また沙耶香と普通に喋れるようになった。
ただ、だからって全てが元通りになったわけじゃない。
一度沙耶香を可愛い女の子として見た以上、俺は沙耶香を性的に意識するようになっていた。
俺もちょうど思春期入りたて。
クラスの男子がエロ本やAVを漁り始めた一方で、俺は、あろうことか幼馴染に性の関心を向けてしまっていたんだ。

改めて客観的に見れば、確かに沙耶香は可愛い。
小さい頃はショートだったが、小学校も高学年になると、徐々に髪を伸ばすようになった。
割と身体を動かすのが好きなタイプだったから、長い髪は後ろでゴムを使って留めているのがほとんどだ。
この時点で解ると思うけど、沙耶香は派手なタイプじゃない。
中学に上がると、クラスの女子も化粧もするし、整形してる奴も結構いた。
男子人気はそういうあからさまに垢抜けた女子に集中し、『可愛い子』談義で沙耶香の名前がすぐに挙がることはない。
ただ、地味でも元がいいのが沙耶香だ。
鉄板の可愛い子を粗方言い終えた後、実は……という口調で挙げられる筆頭が沙耶香だった。
そしてそれを聞いて、他の男子も安心したように、だよな、実は俺も、と続く。
要は隠れたファンが多かったわけだ。
そういう時、次に話題になるのが俺だった。俺が沙耶香の幼馴染というのは有名だったから。
『アイツ、橋詰の幼馴染らしいぜ』
『マジかよ!? クソ、いいな…………』
そういう噂を耳にするたび、俺は密かに優越感を覚えたものだった。
どうしても沙耶香の秘密を知りたいという熱心なファンに、菓子パン一個、ジュース一本を見返りとして情報提供した事もある。
何しろ、赤ん坊の頃から見てきた相手だ。話せるネタなんて腐るほどあった。



俺と沙耶香の道が分かれたのは、中学に入ってお互いに部活に入ってからだろう。
沙耶香はテニス部、俺はサッカー部。
それぞれ女子と男子の一番人気の部活で、お互いにそのミーハーぶりをからかった。
とはいえどちらも、最初はかなり熱心に部活をやっていたと思う。
遅くまで練習して、試合にも出た。日程が被っていなければ、お互いの試合を応援に行った。

この時も俺は、密かな優越感に浸れる。
俺が試合前の沙耶香に声を掛ければ、アイツはちゃんと反応してくれるんだ。
それも、他の奴にする反応とは違う。背を向けたままラケットを小さく振り上げるような、ちょっとワイルドな仕草だ。
外ではどちらかといえば大人しめな沙耶香だから、そうした仕草の違和感はよく解る。
その特別な反応を鋭く察して、沙耶香のファンらしき奴が睨んできたりするのが面白かった。
逆に、沙耶香が俺に声援を送る時もそうだ。
その周りに座った男子が沙耶香を見てぎょっとし、俺に恨めしげな視線を寄越すから面白い。

ただ……俺の方は万事順調には行かなかった。分岐点が訪れたのは中二の秋だ。
試合終盤、スライディングでボールを奪いに行ったところ、相手チームの奴に思いっきり膝を蹴られた。
勿論この場合、誰も悪くない。俺も相手も、ボールを奪おうと必死だったが故の事故だ。
ただ、これで俺は膝をやり、二ヶ月入院することになった。
その間は、部員が入れ替わりで来るだけでなく、沙耶香も毎日見舞いに来てくれた。
大抵は、練習後で汗まみれのまま駆けつけてくれた。
沙耶香の汗の匂いは若干甘く思えて、俺は不覚にも何度か勃起した。
テニス部に入ってからの沙耶香はかなり細くなっていて、でも胸はそんなに無かったから、
袖の短い制服だと何かの拍子にスポーツブラが覗く。それもまた興奮を煽る。

俺はとうとうある日、沙耶香が病室から去った後、その残り香とブラ覗きをネタにオナニーした。
沙耶香で抜いたのはこれが初めてだ。
罪悪感は物凄かった。ほとんど姉妹をネタに抜いているのと同じなんだから。
ただ、病室ってのは性欲を発散させる機会がほとんどない。
当時思春期の俺は、一日オナニーしないだけでも勃起が痛くて眠れないような有様だった。
だから沙耶香という、今の今まで傍に居て、しかも可愛い女子をネタにしたのもある意味不可抗力だ。
そして俺は、この時知ってしまった。
沙耶香をネタにオナるのが、罪悪感も相まって、滅茶苦茶気持ちがいい事に……。

幸い俺の怪我は、後遺症が残るようなものじゃなかった。
でも、心の傷は完治しなかったらしい。怪我以来、ボール争奪戦に加わるのが怖くなったんだ。
腰が引けるとかいう次元じゃなく、『ボールを奪わないと』という瞬間が来ると、急に眩暈や吐き気がする。
コーチは俺のその様子を見つけると、すぐにホイッスルを鳴らして試合を中断させた。
部員は全員俺の事故の瞬間を見ているから、文句を言う奴はいない。
むしろ先輩後輩の皆が、大丈夫か、大丈夫ですか、と本気で心配してくれた。
ただ……そういう状況ってのは、俺自身にとってはかなり辛い。
俺がいるせいで妙な空気になるのが耐えられず、俺は段々と部活に顔を出さないようになっていった。
コーチもそれを咎めるようなことは無く、一度面談をして、『無理せず、気が向いたら楽しみに来い』と言ったきりだった。

それまで熱を入れていたサッカーが出来なくなった後、俺はしばらく空っぽだった。
別のスポーツ……バスケや野球も一時は考えたけど、激突やスライディングがトラウマの人間には無理そうだ。
結果、俺はそこそこ勉強をしながらも、華の学生生活を無為に過ごしはじめた。
思えばこの時、俺はかなり勿体無い事をしている。
サッカーをしている男子ってのは学生時代えらくモテるが、俺にも一度、告白してくれた娘がいる。
割とそこそこ可愛くて、いかにもな文学少女って感じの娘だった。
でもあろう事か、俺はその告白を即答で断ったんだ。
理由は2つある。
一つはサッカー部をやめて自暴自棄に陥っていて、彼女と付き合うどころじゃなかったこと。
もう一つは……やっぱり沙耶香の事が頭にあったんだろう。
明確に沙耶香と付き合いたいと意識してた訳ではないにしろ、深層心理では沙耶香を相手に選んでいたらしい。
これは、自分の中の気持ちを見直すには良いチャンスだった。
結局俺は有耶無耶にしてしまったが、もしもこの時に自分の気持ちを整理して行動していれば、
俺と沙耶香の関係はまったく違ったものになっていたはずだ。
それを今になっていくら思ったところで、もう何もかも遅すぎるんだが。



思春期の性欲ってのは、スポーツやら喧嘩やらで発散させないと、恐ろしいほどに溜まってしまう。
俺は、それを溜めてしまっている方だった。
しかも頭の中では、いつでも沙耶香の事ばかり考えてしまう。
以前の間違いがそのまま継続していて、それが思春期のムラムラで増幅された形だ。
その鬱屈した気分の果てに、俺はとうとう劣悪な行動に移ってしまう。

最初のきっかけは偶然だった。
水曜の夕方6時半。俺が何もする事がないので電気を消してベッドで寝ていたところ、ふと隣で電気が点く。
沙耶香が帰ってきたんだ、とすぐに解った。
俺は興味本位で隣の部屋を覗く。
沙耶香はちょうど、窓を開けて換気を行っているところだった。
ちょうど夏が近づいて蒸し暑い季節だったから、締め切った部屋には熱が篭もっていたんだろう。
沙耶香は割とエアコンに弱いので、基本は換気で涼むほうだった。
俺はその様子を何気なく覗いていた。
こちらから沙耶香の部屋は丸見えだが、沙耶香の部屋から俺の方はまったく見えなかっただろう。
俺はこの少し前に、カーテンレールが壊れた事をきっかけにブラインドを設置していた。
この時ブラインドはほとんど閉まっており、中から外がかろうじて見える程度の隙間しかない。
おまけに俺の部屋は電気が消えて暗く、沙耶香の部屋が明るい。
こうした条件が揃っていれば、目を凝らしても俺が覗いている事なんて解らないだろう。
そもそも最初から部屋の電気が消えていれば、普通は部屋にいないか、寝ていると思うに違いない。

実際このとき沙耶香は、俺の視線に微塵も気付いてなかったんだろう。
窓を開け放ってから、そのまま堂々と着替えを始めたんだから。
俺は思わず身を起こす。
この頃、俺は沙耶香とやや疎遠になっていた。
俺がサッカー部の話題に触れて欲しくなかったこと、沙耶香が部活で多忙なこと、思春期の微妙な距離感。
そもそもお互い、同性との付き合いが多くなってくる頃でもある。
そうした要素が関係して、休日すらあまり一緒にいることはなくなっていた。
だからこそ、久々に見る沙耶香の身体は興味深い。
俺は固唾を呑んで沙耶香の着替えを見守った。
制服を脱ぎ、シャツを脱ぎ、ストライプのブラジャーを露出させる。
いつの間にかスポーツブラではなくなっていた。
その理由は、ブラジャーが外された瞬間に判る。
実に小5以来で目にする沙耶香の生の乳は、確かな膨らみが有った。
けっしてでかいとは言えないが、確かにスポーツブラで圧迫するには窮屈そうだ。
お椀半分といった大きさの沙耶香の乳に、俺は心臓が破れそうなほど興奮していた。


それからというもの、俺は沙耶香が部活から帰る頃を見計らって覗きを続けた。
沙耶香は大体は7時前に帰宅した。
俺はその時間を狙い、部屋の電気を消してブラインドの傍に待機しておく。
沙耶香はそんな事とは露知らず、着替えを続けていた。
沙耶香の事は何でも知っているつもりだったが、隠れて着替えを覗いていると、新たな発見が多かった。
たとえば、下着は割と上下不揃いのことが多い。
パンツも大体6種類ぐらいの地味めな色を、順番に履いているようだった。
月曜は薄緑の、火曜は水色の。その順番を、自分の中のルールとしてキッチリ決めているみたいだ。
もちろん、たまに新しいパンツも買われるし、汗をかく季節なんかには、シャワーを浴びるたび履き替えるので順番は崩れる。
それでも、何かしらの法則は決めているらしい。

そして覗きの成果は、着替えだけに留まらなかった。
すっかり俺が不在だと信じているらしく、沙耶香は着替えた後、窓を開けたままでオナニーする事すらあった。
沙耶香の部屋着は、昔から大体はキャミソールとハーフパンツだ。
冬なら場合によってジャージの事もあるが、暑い時期は薄着で通している。
沙耶香はいつも、その馴染みの格好のままオナニーに移っていた。
最初はそんな兆候はない。
ただ普段どおり学習机のノートパソコンを眺めているか、小説を読んでいる。
ところが時々は、その姿勢のまま指が股の間に差し込まれた。
ハーフパンツのボタンを外したまま、ショーツ越しにクリトリスを刺激しているらしい。
大体は指の腹で押すようにするか、下敷きの側面で擦っていた。
時々マウスでパソコンをクリックしたり、閉じかけた小説に折り目をつけたりしながら、10分くらいそれを続ける。
そうしたらその後は、膝の上くらいまでパンツをずり下げて指で刺激しはじめるんだ。
この頃にはもうパソコンとかは見てなくて、目を閉じ、口を半開きにしている。脳内のイメージに浸ってるんだろう。
遠くからだから断言はできないが、手の第二関節は大体見えていて、あまり膣への深い指入れはしていないらしかった。
たまに、パンツを完全に抜いて、机の下で脚をピーンと伸ばしたまま激しくオナニーに耽ることもあった。
改めて見ると、沙耶香の脚は本当に綺麗だ。
テニスを始めてから体型がしゅっと締まって、モデルみたいになってきている。

俺は、沙耶香がオナニーに耽る光景をオカズにして、気付かれないようブラインド裏で扱きまくった。
高まってきて本気で扱くときには、窓の下に身を屈めてやった。
小さい頃から知っている相手だけに、罪悪感は当然あったが、それが余計に性欲を後押しする。
どんなエロ本を見てするより、どんなエロビデオを見てするより、沙耶香を覗きながらオナる方が興奮した。

俺は沙耶香をネタにしてオナニーに耽りつつ、当の沙耶香本人とは距離を置き続けていた。
たまに家の前で偶然会ったときに、短い時間話すぐらいだった。
それすら罪悪感で自然にはできていなかったと思うが。
沙耶香にしてみれば、この頃の俺は『露骨に自分を避けている』という感じだっただろうな。
ただ俺は、この頃聞いた沙耶香の話はどれ一つとして忘れなかった。
沙耶香は、周りで流行っているツイッターはやっていないそうだ。
『ニュースでよく炎上とかやってて、怖いから』だそうだ。
真面目な沙耶香らしいといえば、らしい。
フェイスブックはやっていて、アカウントも教わったが、それも女友達との付き合いで、という感じ。
更新頻度もあまり高くなく、あくまで女友達との絡みが中心だ。
昔から沙耶香は、自己顕示欲が強くない。なまじリアルでモテるせいで、なるべく目立ちたくないんだろう。
小学校低学年までは、結構俺を引っ張り回すやんちゃなタイプだったんだが。

中3になって沙耶香が部活を引退すると、2人とも受験一色になった。
俺にとってこれは好機だ。
微妙にぎくしゃくしていた沙耶香との関係を、勉強会をする事で近づける事ができる。
沙耶香と俺は、昔から同じ高校を狙っていた。
地元でそこに通っているというと、『頭良いのね』と言われるレベルの私立だ。
俺は英語が割と得意で数学が苦手。沙耶香はその逆だったから、一緒に勉強するメリットもある。
俺が勉強会を提案すると、沙耶香は驚きを示した。
妙に距離を置いていた相手から誘われたんだ、当然だろう。
「オッケ!」
親指を立てて返されたその答えが、俺はとても嬉しかった。

本当を言うと俺は、この勉強会の間に沙耶香に告白するつもりでいた。
高校へ上がる前に、半端な関係をキッチリとしたものに変えたかった。
でも……いざとなったら言葉が出ない。
もしも断られたら。その時は、今の幼馴染としての関係すら壊れてしまうのでは。
俺はそれが怖くて、一日、また一日と告白を先延ばしにし続けていた。


受験本番が近くなっても、俺はまるで集中できていなかったと思う。
実際、勉強会の最中に、沙耶香の呼びかけで我に返る事が何度もあった。
「ちょっと、さっきから何見てんの!?」
そう言われて俺は、自分が沙耶香の胸を見ていた事を悟る。
何度も何度も覗き見た、わずかな膨らみだ。
「んと、胸」
訝しむ沙耶香に、俺は正直に答えた。
「はあっ!?」
「いやだから、お前の胸。…………お前、女っぽくなったよな。いつの間にか」
告白への足がかりとして、あえて性的な話題を出す。
しかし、その後には沈黙が降りた。
ほんの数秒だったとは思う。でも俺は、その短い沈黙がひどく怖かった。
沙耶香は数秒ほど口を開けて俺の顔を見た後、我に返る。
「は、はぁ!? バカじゃん!」
そう言って笑った。笑い飛ばされるのは、沈黙よりよほど心地良い。息苦しくない。
だから俺も、その安易な笑いに乗っかってしまった。
「…………ハハ、だな。勉強のしすぎかも。ちょっと休憩すっか!」
臆病者の笑いだ。本気で告白をするつもりなら、気まずいからと退いてはいけなかったのに。

紅茶を飲んで、チョコを齧って、バカ話をして。
俺達の関係は、いつのまにか普段通りに戻ったようだった。
でもこの時よくよく危機感を持って見ていれば、沙耶香の微妙な変化にはいくらでも気付けただろう。
ふとした瞬間ティーカップに落ちる、落胆したような瞳。
普段通りのようでいて、明らかに少ない口数。
ノートに書かれた文字の歪み。
俺はそれら全てを本能的に感じ取りながら、けれども無視し続けていた。
まだまだチャンスはある。まずは2人で同じ高校に合格して、その中でまた機会を窺おう。
そんな逃げの思考に走ってしまっていた。
今なら解る。この世の中、先延ばしの思考をする人間が、栄光を掴むことなど無いと。

数ヵ月後、俺は…………志望高校に落ちた。沙耶香は受かった。
少し前の合否判定では、俺の方が上だったんだ。俺は判定A、沙耶香はB。
お前なら落ちる事はないだろう、と担任からお墨付きを貰うほどだった。
でも、俺は落ちた。
まさか落ちるなんて。しかも、沙耶香と同じ高校にいけないなんて。
俺は部屋で号泣したし、沙耶香も自分が合格している以上、なんと声を掛ければいいか解らない様子だった。

後で知った事だが、実は沙耶香は、志望高校にスポーツ推薦でも行けたらしい。
でもあくまで一般受験がしたいといい、友達から不思議がられたそうだ。
『私だけ、無事に合格するのは嫌だから』
沙耶香はそう答えたらしい。
自分の方が落ちる可能性は高かったのに、スポーツ推薦が無理な俺と足並みを揃えてくれていたんだ。
そして俺は、その期待を最悪な形で裏切ったことになる。





通う高校が分かれてから、俺と沙耶香の生活サイクルにはいよいよ違いが出た。
沙耶香の方が高校が遠いうえ、テニス部の朝練もあるようで、まず家を出る時間が俺より遥かに早い。
逆に帰りは遅く、スポーツに力を入れる高校だからか土日にも練習があるようだった。
挙句には、部活の合宿や友達の家へ泊まるなど外泊も多い。
また俺自身、大学受験に向けて塾へ通い始めたため、いよいよ沙耶香と居る時間がなくなってしまっていた。
ただ、嬉しい事もある。
沙耶香は友達の家に泊まった後は、時々紙袋入りのクッキーをくれた。
『友達の家で焼いたのが余った』というそのクッキーは、本気で市販のものより美味かった。

また、沙耶香も学生だから、平日は基本的に家に帰ってくる。
俺はそのタイミングを狙い、なおも覗きを続けていた。
沙耶香には2つ変化があった。
一つはいつの間にか、不揃いの下着をやめていた事だ。
いつも上下揃いで、フリルつきのピンクなんかの、妙に可愛いものを穿いている事が多くなった。
まあ、沙耶香ももう女子高生。
中学までなら野暮ったい下着で居られても、友達づきあいなどするには可愛い下着も必須なんだろう。
ただ、雑誌の広告にも載っていそうな洒落た下着は、昔のような生々しさが無かったのは事実だ。
そして、もう一つ。
沙耶香は部屋にいる間、全くオナニーをしなくなった。これは下着以上に不思議だ。
確かに女子は、男子のようにはムラムラしないと聞く。でも中学の時は、一週間に一度はしていたんだ。
そこそこ性に興味があるのは間違いない。なぜそれが急になくなったのか?

だが……高校入学から半年あまりが過ぎた頃、とうとう俺は決定的なシーンを覗いてしまう。
沙耶香が携帯で誰かとしゃべっている所だ。
最初はまた女友達だろうと思った。実際、沙耶香が女友達と携帯で話していることは多かった。
けれども、何かおかしい。
話し相手は女じゃない……俺はその匂いを敏感に嗅ぎ取った。
手の仕草といい、口元を抑えるような動きといい。明らかに異性の影を感じさせる。
それに気付いた瞬間、俺の中にむず痒いような疑念が一気に湧き上がった。
おかしい。沙耶香には男が出来たんじゃないのか?
事実を探りたいと思ったが、情報が少ない。
ツイッターはやっていないと言っていたし、フェイスブックのページを見ても変わった様子はない。
色々と考えを巡らせていると、唐突に閃くものがあった。
以前、沙耶香と勉強会をしていたときだ。
休憩時の雑談ついでに沙耶香がスマホをいじり、グーグル検索の結果をみせてきた事がある。
俺はその時、ほんの一瞬見たんだ。
見慣れない、変わったグーグルのアカウント名。
その時は告白の事しか頭になかったからすぐに忘れ去ったが、あれは大きなヒントかもしれない。
俺は全神経を集中し、必死になって記憶を探る。
あ、い、う、え、お……から始めて、一文字ずつ。その甲斐あって、ある時ふっと思い出した。
『サワーメロンキティ』だ。
忘れないうちに、その文字列をパソコンに打ち込んでいく。
直感的に、ツイッターの文字も入れて検索する。

…………ビンゴだった。
変わったアカウント名だけに他の候補もなく、ただ一つのアカウントが検索のトップに躍り出る。
震える指でプロフィールを確認する。
アイコンは、紛れもなく俺のよく見知った顔…………沙耶香のプリクラ写真だ。

やっぱりツイッターをやってたんじゃないか。
以前俺に、ツイッターをやってないと言っていたのは、ウソだったのか。
いや或いは、あの後に人から勧められて始めたのかもしれない。
でもそれなら、俺に教えてくれてもいいじゃないか。
最初から隠すことを前提でアカウントを取ったのか。俺がツイッターを警戒してないのをいい事に。
色々な考えがぐちゃぐちゃと脳裏を渦巻く。
でも、それをいくら考えても仕方がない。問題は、そのツイッターで何が呟かれているのか、だ。

ツイートを追い始めて数分と経たない内に、俺は愕然とした。
そこには、衝撃的な事実が並んでいたからだ。
結論から言えば、沙耶香はこの数ヶ月の間、ある男とやりまくっていた。
相手の苗字は木田。名前はどうやら慶也というらしい。
ツイートの中に、何度も、何度も現れる名前だ。

一番最近の“木田先輩”との出来事は、一緒に水着を買いに行って海浜プールに行ったことらしい。
俺とも行った事がなかったのに。
先週の土曜日……俺は、友達の田舎に遊びに行くのだと聞かされていた。
花火大会の様子を写していた数時間後には、怪しげなキングサイズの回転ベッドを嬉々として撮影して載せていたり、
棚にコンドームが備え付けられている事実を写したりしていた。
ラブホテルだ……俺はショックを受けた。
花火を愉しんだ後に、ラブホテル。そのままやったんだ。行為中の写真はなかったが、その流れがはっきり解る。

ツイートを遡ると、他にもいくつかデートの写真があり、そのままホテルへ行ったと思われる日がいくつかあった。
木田のマンションでオーブンを借りて、クッキーを焼いたという呟きもあった。
完成品の焼き色といい、形といい、見覚えがある。俺が嬉々として大切に食っていた、紙袋入りのクッキーだ。
『友達の家で焼いた』なんて真っ赤な嘘。
木田のために精魂込めて作ったクッキーの余り、だったんだ。
そう思い至った瞬間、俺は強い吐き気を感じた。
あの時嬉々として食べていたものが汚物だったように思えてきて、トイレに駆け込んで吐いた。
多分、沙耶香に悪意は無かったんだろう。せっかく焼いたんだから、俺にも食べさせてあげよう、というだけだったに違いない。
そう解っていても、胃の中からこみ上げるものを我慢できなかった。

トイレから戻り、改めて写真の中の沙耶香を見る。
俺といる時とはまったく違う、心の底から楽しそうな笑顔で沙耶香が笑っている。
こんな面があったのか……と、俺はただ愕然とした。

さらに日を遡ると、まさに決定的な写真が見つかる。
彼氏に撮られたものだろう。カラオケボックスでフェラしている姿を、上から撮った写メだ。
『ちょっと前から、結構仕込まれてる』という呟きもある。
さらにツイートを辿っていくと、絶望が増した。
ついに、一番初めのエッチに関するツイートが出てきたからだ。
まだ興奮冷めやらないらしく、沙耶香は短時間に大量に呟いている。

初めては痛いと聞いていたから、ひどく緊張していたこと。
“木田先輩”はそんな沙耶香を優しく抱きしめ、リラックスさせてから抱いてくれたこと。
物凄く痛くて叫んでも、大丈夫、大丈夫、と耳元で囁いてくれて、その安心感で落ち着きを取り戻せたこと。
初めての相手が慣れた“木田先輩”で、本当に良かったと思うこと……。
そこには木田への深い愛情と、絶対の信頼が見て取れた。
呟かれた日付は、6月20日。
高校入学から2ヶ月ちょっとだ。とすれば木田と知り合ったのは、高校入学から間もない頃だと考えられる。

何枚か2人で撮影したプリクラがあり、それで木田の見た目がわかった。
そこそこ長身で、否定できないレベルのイケメンだ。俳優と言われてもまぁ信じるだろう。
いかにも社会人という感じで、顔立ちにも年季が入ってて、金もありそう。
リーダー気質でグイグイ行く感じなのが、見た目、特に目の感じでわかる。
女にモテるのは勿論、男でもつい頼ってしまうタイプだ。
よりによってそんな奴が恋のライバルなんて、絶望的もいい所だった。
白い歯を覗かせ、いい笑顔で沙耶香の隣に写る木田。
それを睨むうちに、どうしようもない劣等感が湧き上がってくる。
これからどれだけ勉強して、必死に仕事をしたって、俺がこういうイケイケなタイプに成り代わるのは無理だ。
オスとしての魅力で決定的に負けているのが、痛いぐらいに解る。
たとえ俺が沙耶香だったとしても、俺じゃなく木田を彼氏に選ぶに決まっている。
「クソッ!」
俺は、右拳で壁を殴りつけた。予想以上の音がして、壁がへこむ。
明らかに他の部分とは違う陰影のついた壁を見て、ああ親に怒られるな、なんて現実的な計算をする自分が嫌だ。


木田の事はほぼ毎日なにかしら呟かれている一方で、俺に関する呟きは今やほとんど無かった。
けれども最初の方には、割と俺のことと思わしき内容も書いてある。
日付が進むごとに、俺への興味が薄れていっている証拠だ。
沙耶香の心を満たしているのは、あくまで木田。木田なんだ。
じゃあ、その木田ってのはどんな奴なのかが気になる。
ツイッターのプロフィールを見ると、どうやら沙耶香の部活のOBらしい事が解った。
さらにその下には、ブログのURLが貼られている。
俺はそのリンク先に飛び、さらなる衝撃に見舞われた。
木田がブログ提携の動画投稿サイトに、沙耶香とのハメ撮り動画を載せていたからだ。
ものすごい再生数だ。少ないものでも6000、多いものになると40000以上はある。
つまりはそれだけの回数、沙耶香の裸が見られた事になる。
俺はその事実を知っただけで、軽い眩暈のようなものに見舞われた。吐き気も少しする。
『サヤをホテルで開発中☆』
そう題名をつけられたものを再生すると、ラブホテルのベッドで愛撫される沙耶香が映った。
映像は20分単位で、3分割されている。

(1/3)の映像では、沙耶香がベッドに膝立ちになり、その背後から木田がローターで朱色の秘部を弄んでいた。
目の部分にモザイクこそ掛かっているものの、体型や白い肌、そして左脇腹の黒子で間違いなく沙耶香本人だと解る。
まさか、成長した幼馴染の性器を初めて見るのが、こんな形でとは。
『あ……あん…………ああっ…………』
沙耶香は荒い息の合間に、甘い声を上げ続けていた。
木田はクリトリス周辺にローターを這わせつつ、キスを迫り、乳房を揉みしだく。
改めて正面から見ると、沙耶香の胸はそこそこの膨らみがあった。
たぶんCカップ。女子高生という括りで考えれば、やや大きい方じゃないかと思う。
それを、木田の指が愛撫していく。
それが気持ちいいのか、ローターのせいか、沙耶香の腰は円を描くように横向きに揺れていた。

(2/3)では、沙耶香はベッドに仰向けで横たわり、その脚の間に木田が入ってローター責めをしていた。
『ほら、どう? イクの?』
木田は責めながら、沙耶香に問いかける。
沙耶香はさっきの映像以上に甘い声を上げながら、大股を開き、脚をピンと伸ばし、と忙しなく蠢かせている。
『イクんならイッていいんだよ。その代わり、イク時にはちゃんと声出してね。出せるよね。
 …………ほら、どう、イク? イッていいんだよ、ほら』
木田はそうして、言葉で巧みに沙耶香の絶頂を導いているらしい。
『い、いくっ…………いくぅっ…………!!』
沙耶香は、木田の命じた通りに絶頂を宣言した。まるで、躾けられた犬のように。

(3/3)では、とうとう木田と沙耶香のセックスそのものが撮られている。
2の続きらしく、仰向けの沙耶香が大きく脚を開き、その上から木田が圧し掛かって動く。
映像の冒頭部では、沙耶香も脚を閉じ気味で、ただ木田の動きに合わせてシーツの擦れる音がするだけだった。
でも3分が過ぎた辺りから、木田の手が沙耶香の脚を割り開く。
大股を開いた沙耶香の中に、木田の赤黒いアレがねじ込まれる様子がモロに見えはじめる。
『どう、サヤ。サヤはこの角度好きでしょ。好きだよね。今日は、何回イケるかな?
 …………ああ、サヤの子宮、すっごい降りてきてて気持ちいいよ』
木田は常に何かしらの言葉をかけながら腰を打ち込み続けていた。
結合部の状態はよく見えないが、にちゃ、にちゃという音がしっかりと拾われている。
その音を聞くだけで、膣の状態を知るには十分だった。
『んあぁあ、ああっ、ああああっ…………あっ、ああ、いい…………いいぃーっ………………!!』
沙耶香の甘い声もしっかりと聴こえてくる。
俺は、そのセックスを全部見ることはできなかった。映像は10分近く残っているものの、とても耐えられそうにない。

動画には、様々なコメントが付けられていた。
『今度の子も、超可愛い!』
『いつもながら慶也様の細マッチョな体に惚れる、私も抱いて欲しい』
『なんて理想的なイチャラブだ』
全てがそうした賞賛コメントだ。かなり常連がいるらしく、和気藹々とした雰囲気が形成されていた。
そう、歓迎されている。木田と沙耶香の、このセックスは。
俺はやり場の無い怒りに包まれながら、別の動画を再生する。
断じて見たいわけじゃない。ただ、動画を残らず確認せずには居られなかった。

分割も含めて何十本に渡るハメ撮り動画では、様々な体位で沙耶香と木田が交わっている。
『ちょっと前から、結構仕込まれてる』というツイートがあった通り、多くの動画で沙耶香はフェラをしていた。
ソファに掛けた木田の足元に沙耶香が蹲り、黒髪を揺らしてフェラを繰り返す。
熱心な沙耶香の奉仕に木田がコメントするたび、俺の心の中にはどす黒いものが渦巻いた。
セックスシーンも、観ているだけで胸焼けがするようで、苦しくて涙が出た。
タオルで拭っても拭っても涙があふれて止まらなかった。
それでも我ながら呆れるのは、勃起している事だ。
思春期だからか、はち切れるほどに硬く反り立っている。
けれども勃起に耐えかねて扱こうとすると、右拳がひどく痛んだ。
ツイッターで木田の顔を見た瞬間、怒りで壁を殴った部分だ。
骨にヒビが入ってるんじゃないかと思えるぐらい、ズキズキとひどく痛む。とてもオナニーは出来ない。
一度痛みで気分が萎えると、ひどくバカバカしくなり、勃起したままのアレをズボンにしまった。

木田についてさらにネットを漁ると、大学時代・社会人時代を通して何人もの女と関係を持っていた事が判った。
それらの女に対してもハメ撮りビデオを撮影し、別アカウントで公開していることも。
つまりは沙耶香も、女の何人目かに過ぎないわけだ。俺にはそれが無性に腹が立った。
この木田という男は沙耶香に飽きたら、すぐに浮気する。遊ぶだけ遊んだらあとは捨てるだけだ。
沙耶香本人にもこの事実を知らせなければ。
俺はそう思い、証拠を揃えた上で、意を決して沙耶香を部屋に呼ぶ。
でも……その結果は、俺の予想とは全く違っていた。




「バカじゃないの?」
俺の集めた証拠を見た沙耶香の第一声は、それだった。
「なっ……!」
「人のツイッター覗き見た挙句に、こんなの一々持ってきて、それをバカって言ってんの。
 浮気するとか、あんたに何が解るの? 自分がろくに経験ないから、嫉妬してるんでしょ」
沙耶香は、俺に軽蔑しきった瞳を向けた。
喧嘩は数え切れないほどしてきたけど、これほどに感情の無い瞳を向けられるのは初めてだ。
親の仇……まるで、そんな目だった。
「純一なんかが、木田先輩のこと解ったように言わないで。
 木田先輩は本気で私の事考えてくれてるし、大事にしてくれる。幸せにだってしてくれる。
 今はもう、木田先輩以外の人と結婚とか、考えられないから」
冷ややかな口調でそう告げた沙耶香は、それ以上居たくないとばかりに素早く立ち上がる。
俺は座ったまま、反射的にその服の裾を掴んでいた。
「ま、待てよ沙耶香! 俺、お前が好きなんだよっ!!」
この最後の場面で、ようやく口に出来た一言。
今の今まで、幼馴染の関係を壊すのが怖くて言えなかった一言。
それがついに、俺の口から滑りでた。
沙耶香の動きが止まる。もしかして、と俺は思う。
けれども……その最後の望みすら振り払うように、沙耶香の服の裾は俺の指を離れていった。
そのままドアを開き、まさに部屋を出ようとする時、沙耶香は立ち止まる。

「…………ね、純一。ほんとはね、私だってすごく好きだったよ。純一のこと。
 小さい頃からずっと一緒で、大人になったら純一と結婚するんだろうなって、当たり前みたいに思ってた。
 純一との子供の顔だって、何回も想像したよ。
 でも、今は違う。私の中ではもう、純一よりも、木田先輩の存在の方がずっと大きくなってる」
沙耶香はそこで、俺の方を振り向く。
その目からは涙が零れていた。
「ねぇ、純一……そこまで私が好きだったんなら、何でもっと早く、告白してくれなかったの?
 純一の告白がもっと早かったら、きっと、何もかも全部…………違ってたのに!!」
沙耶香の瞳は、俺に心底からの怒りを向けているように見えた。
ひどく悲しんでいるようにも見えた。
いずれにしても、沙耶香の顔を間近で見るのはこれが最後だ。俺はそう直感する。
「じゃあ、もう二度と近づかないでね、“ジュンチ”。……今までありがと。バイバイ」
沙耶香はそう言ってドアを閉める。
俺はその無機質な木の扉を、ただ呆然と眺めている事しかできなかった。
窓からの隙間風に、青春の終わりのようなものを感じた。



以来、沙耶香のツイッターには鍵が掛けられるようになった。
ツイッターの鍵は、限られた人間以外の閲覧を防ぐ非公開機能だ。
鍵のかかったツイートを見るには、こちらからリクエストを送り、それに対しての承認を得なければいけない。

恋が終わったことは理解していたが、呟きが見られないとなると、逆に気になって仕方がなくなる。
せめて見守るぐらいはさせてほしい。
小さい時からずっと一緒に育ってきた仲だ。気にするなといわれて、はいそうですかとはならない。
とはいえ、明らかに俺を警戒しての鍵なんだろうから、そのまま元のアカウントで申請をしても弾かれて終わりだ。
まずは、リクエストの申請者が俺だとバレないようにしないといけない。
俺は適当なニックネームで新しいアカウントを作成した。
プロフィールは適当に捏造し、なるべく面白いツイートをして、数週間でフォロワーを増やした。
そうして完全に俺と無関係そうな匿名アカウントを作り出し、満を持して沙耶香にリクエストを送る。
承認を待つ時間は、ひどく長く感じた。
その日の夜、ついに承認が来る。俺はマウスを持つ手を震わせながら、逸る気持ちでツイートを読み漁った。
そして、再び苦しむ事になる。

ツイートの内容は、より過激なプレイになっていた。
木田の主導で、様々なセックスを試している所だという。
朝までお互いイキ続けのポリネシアンセックス。そしてつい先日は、とうとうアナルにも手を出したらしい。
木田の上げているだろう動画を観に行くまでもなかった。
ツイートのごく短い文面だけで、心臓が破れそうに痛む。
このままではいけない。そう思った俺は、何とか傷を癒す方法を探した。

すでにバイトを始めていた友達から一時的に金を借り、ソープで沙耶香似の嬢を指名したのもそうだ。
プレイ前に断り、その嬢の事を沙耶香と呼ぶ許可を得る。
その上で、沙耶香の名前を呼びながら、人生初のセックスを貪った。
けれどもそれで得られたのは、満足じゃない。
「ずっと沙耶香って言ってたね。好きな子なの?」
プレイ後に嬢からそう問われた時、俺は喉を詰まらせた。
幼馴染か、好きな相手か。どっちで答えようか迷っているうちに、涙がボロボロと出てきて止まらなくなる。
「なになに、大丈夫?」
嬢は一応慰めてくれてたけど、内心気持ち悪がっているのが雰囲気で解った。
やっぱり俺にとっての沙耶香は、あの沙耶香以外のものじゃない。
3万という金を浪費した結果、それが痛いほど理解できた。

俺は色々な事に疲れ果て、沙耶香のフォローを外す。
この頃の俺はもう完全に泥沼だった。学校に行く気力もなく、ほとんど不登校状態だ。
そんな中、ウチの親から沙耶香が引越すらしいという話が出た。
木田の実家である中部地方に行くことにしたそうだ。
まだ高校生という事もあり、沙耶香の両親は反対したが、沙耶香が折れなかったらしい。
そのうち木田も家に来て、両親を根気強く説き伏せたんだそうだ。

引越しの当日、親は俺に見送りしないのかと尋ねた。
親にしてみれば、小さい頃からずっと遊んでた仲だ。不自然に思うだろう。
でも行ける訳がなく、俺は二階の部屋のブラインドから、遠ざかるトラックを眺めていた。
トラックが完全に見えなくなった後、ベッドに突っ伏して泣いた。泣きまくった。


俺はしばらく、完全に沙耶香を忘れようとした。
とりあえずバイトをはじめ、学校にもまた行きだした。
でも数ヶ月経つと、やっぱりどうしても気になり始める。
自分の意志の弱さを嘲笑いながら、俺は再度沙耶香宛てに申請を飛ばした。
それから二日後。
ツイッターに一通のダイレクトメールが届く。その送り主を見て、俺は目を剥いた。
木田だ。
『お前が純一って奴か。幼馴染だか知らんが、もうこれ以上沙耶香に付きまとうな。
 沙耶香は俺の彼女だ。あんましつこいと……潰すぞ』
動画の中の甘い感じとはまったく違う、ドスの効いた文言。
そしてそのダイレクトメールの直後、木田はある画像をタイムラインに載せた。
恐らくハワイらしき外国の海をバックに、体育会系の男達がずらりと並んでいる写真だ。
水着姿の女も数人居る。
写真中央に木田に抱かれるように映っているのは、日焼けした沙耶香のようだ。
ただ……雰囲気は随分と変わっていた。
髪は茶髪になり、目元も少しいじられている。小さくてほとんど見えないが、臍にピアスも開いているようだ。
そこにいたのはもう、地味で隠れファンの多かった沙耶香じゃなかった。

結局俺は、その後沙耶香の様子を見ることはできなくなった。
ただ国立に受かってから、サークルで仲良くなった奴に頼み、こっそりツイートを見せてもらった事ならある。
沙耶香は今、三児の母になっているらしい。
少なくともツイッターの上では、心から木田を愛し、幸せに暮らしているとある。
俺はその言葉を信じるしかない。

ブラインドから覗く沙耶香の部屋は、すべてがあの頃のまま、部屋の主だけを欠いて存在していた。



                              終



21:28:10
皆さんのおかげで、とうとうこのブログも100万ヒットを超えました。
つまりは拙作を皆さんに100万回ご覧になって頂けたという事で、その途方もなさに唖然とします。
このブログを始めた時点では、100万ヒットなど夢のまた夢と思っておりましたが……。

ともあれ、非常にめでたい!という事で、以前にも一度やった、
『リクエストを募ってのお礼小説』をまたやりたいなと思っております。
とはいえ、現時点では色々とやる事があってすぐには動けないため、
今月一杯リクエストを募集したいと思います。

なお、リクエスト内容は、既存作品の続編希望~でなく、新規に書き下ろせるネタであれば嬉しいです。
リクエスト方法は、この記事へのコメント・拍手コメント・pixivへのメッセージ、のいずれかをご利用くださいませ。


皆さんからのリクエスト、お待ちしております!!


22:34:19
タイトルの通り。

最近の作品は掲載をサボってしまってましたが、このたび全てを収録しました。
ちょこっと掲載項目を変えた作品もあります
(例:シチュエーション3の風俗モノの下に花魁モノを纏めたり)。

多少は参照しやすくなったと思われますので、またお暇がありましたらご覧下さい。

でわでわん

2014/08/31
18:09:34
※レズいじめ物。非常に胸糞悪いラストです。


アンソン・ミレードは、誰もが認める人格者であった。
だが、他人に甘い人間であった事も事実だ。
田舎町で踊り子をしていたジーンから身の上話を聞かされ、同情して妻に迎えた事もそう。
そのジーンを自分の屋敷で蝶よ花よと大事にし、すっかり付けあがらせた事もそうだ。
アンソンは、ジーンとの間に3人の娘を儲けた。
長女のミディ。
次女のフラヴィア。
三女のララ。
我が侭放題の母を見て育ったこれら3人の娘もまた、当然のように高慢な令嬢に育っていく。
とはいえ、次女のフラヴィアには父の血が幾分濃く出たのだろうか。
アンソンが病でこの世を去った時、フラヴィアだけが懸命に涙を堪えていたのだから。

そして、ミレードの家にはもう一つ、アンソンの置き土産が存在する。
拾い仔であるマリータだ。
縮れぎみの赤毛とソバカスが特徴的なこの少女は、町で浮浪者として彷徨っていた所をアンソンに保護された。
いわばジーンと似た境遇だ。
アンソンはマリータを実の娘のように可愛がるつもりでいた。
しかし……その矢先にアンソンがこの世を去ると、マリータの立場は一変する。
血縁関係のない事を理由に、ジーンが彼女を虐げ始めたのだ。
当然、母の素行を基準とする3人娘もそれに倣った。

義母や義姉妹がアンソンの莫大な財産で悠々自適に過ごす傍ら、マリータは奴隷のような毎日を過ごす。
他の人間が貴族の娘さながらに着飾る中、マリータは常にボロを身に着けていた。
母達がダンスパーティーに出かけている間、ひとりで広い屋敷を隅々まで掃除させられた。
食事の支度も、片付けも、馬の世話も、庭木の手入れも……
使用人3、4人でこなすべき仕事を、まだ14歳であるマリータが一身に負わねばならなかった。
寝起きは馬小屋、用を足す場所はその隅の桶だ。
食事時にも母達と同じ長テーブルに着くことは許されず、床に置いた銀の皿に盛りつけたものを犬食いさせられる。
長女のミディは、犬食いしているマリータの頭を上から押さえつけ、窒息に苦しませるのが半ば趣味のようなものだった。
三女のララは、少しでも気に喰わない事があると、マリータの縮れ髪を鷲掴みにしたり、脇腹を靴で蹴りつける暴行を加えた。
母のジーンに至っては、マリータを視界に入れることすら汚らわしく思っている様子だ。
ただ、次女のフラヴィアだけは、特別マリータに害を加える事がない。
マリータには、それが少し不思議に思えた。




その日の夕食後には、大粒の葡萄が供された。
長テーブルの上には純金の器が並び、瑞々しい葡萄が山と盛られている。
もっともそれを堪能できるのは、母と3人の娘だけだ。
下僕の身であるマリータには、義母達が実を食べ終えた後の皮だけが与えられる。
黒紫の皮を裏返した部分にこびりついた、ごくわずかな果肉。
それが、マリータの知る『ブドウ』だった。
皮から滲み出る渋みの中、ごく僅かに感じとれる甘みは、それでもマリータにとっての至福だ。
しかし、夢見心地の時間は突如として遮られた。
ミディによってではなく、ララによってでもなく、ジーンによってでもない。
マリータにとって最も害の少ない主人である、フラヴィアによって。
「私は部屋に戻って食べるわ。ああ、そうだマリータ。ちょっと用事があるから来て。
 …………早く。そんなもの後でいいでしょ」
フラヴィアは、誰に対してもそうであるように、ややきつい態度で命じる。
マリータはショックを隠せない。
皮だけとはいえ、久々に気まぐれで与えられた褒美だ。せっかく葡萄の味を堪能できる好機であるのに。
まだ果肉の残っている葡萄の皮を未練がましそうに見つめた後、マリータは渋々と立ち上がる。
「おやおや、可哀想に!」
「ホント、フラヴィア姉様も案外酷だわ」
ジーン達は落胆を露わにするマリータを可笑しがりつつ、銀皿の中身を捨てにかかる。
マリータの視線がそれを捉え、いよいよ泣き出す直前のように強張った。

「………………あの、ご用事とは?」
フラヴィアの部屋の扉を後ろ手に閉め、マリータは問う。
そのマリータの前で、フラヴィアはガラステーブルに純金の皿を置いた。
皮などではない、瑞々しい果肉がついたままの巨峰。それが、山のように盛られている。
ごくり、とマリータの喉が鳴った。
『食べたい』と切望してしまう。折檻されるのが嫌で、けして口にはしない願望だが。
するとどうだろう。フラヴィアの指は、誘うように金の皿をマリータの方へと押し出したのだ。
「あれは嘘よ。これ、食べていいわ」
あろう事か、そのような言葉まで聞こえてくる。
マリータは、それが空想による空耳でないと気付くのに、少しの時間を要した。

「えっ……! で、でもそれは、フラヴィア様の分では?」
罠を警戒しつつ、マリータは問いかける。
甘い言葉にはいつも裏があった。少なくとも、ジーン、ミディ、ララの発するそれには。
「あんたもたまには美味しいところ、食べたいでしょ。私はいつでも食べられるから、別にいいわ」
フラヴィアは事も無げに答えると、ベッドに腰掛けて聖書を開いた。
マリータの動きが止まる。
罠か、それとも純粋な幸運なのか。それがまったく読めない。
他の3人であれば明らかな罠と断じられるが、このフラヴィアは陰湿な嫌がらせをしてきた事がない。
そして彼女は、どこか父であるアンソンに似た空気を纏っている……。
「あ、ありがとうございます……」
マリータは、心優しいアンソンの血に賭けた。あえてフラヴィアの勧めに乗ることにしたのだ。

震える指で葡萄のひと房を摘み、口へ。
弾けるような果肉を歯で噛み潰した瞬間、『本当のブドウの味』が口に広がった。
爽やかな酸味と、とろけるような甘み。かつて感じた事もないほどに、深い深い味わい。
「っっ!!!」
マリータはただ目を見開き、未知の甘味に言葉をなくす。
今の今まで恋焦がれていた味は、想像のさらに上をいくものだった。
こうも美味なものが、この世にあったとは。感動で、涙さえ溢れてくる。
フラヴィアは涙ぐむマリータを見やり、驚きの表情を浮かべた。
「な、何よ…………そんなに美味しかったの?」
フラヴィアの問いに、マリータは頷く。何度も、何度も。
それを見つめるうち、常に冷ややかなフラヴィアの目尻が、ほんの僅かに緩む。
「……ふぅん、そう。ならこれからも、時々食べさせてあげるわ」
その一言は、マリータにとってどれほど価値あるものだっただろう。
マリータはまたしても言葉を失い、一生分の幸福を得たかのように目を潤ませる。
「あ、あ、あり…………ありがとう、ござ…………います………………!!」
「べつに礼なんていいわ。あんたも一応、妹なんだから。
 前々から思ってたけど、お母様もお姉様達も、ちょっとあんたに対して冷たすぎるのよ」
照れ臭さを隠すように、フラヴィアはそれだけを告げて聖書へと視線を戻した。
マリータは、その横顔を呆然と見つめる。

美形で通っていた父の血を濃く継いだのか。フラヴィアの容姿は、姉妹の中でも頭一つ抜けている。
腰まで伸びた、陽光を思わせるブロンドの髪。エメラルドさながらの瞳。
王族の娘と称しても、信じる者は多かろう。
ダンスパーティーでも男からの誘いが絶えないらしいが、その殆どを撥ね退けているようだ。
ごく最近になって、ようやく貴族の嫡男と懇意にしはじめたというが、それも相手が誠実な好青年であるがゆえ。
喜怒哀楽を隠さない一家にあって、フラヴィアだけは常に冷ややかな態度を崩さない。
それはマリータに対してだけでなく、他の家族に対しても、また屋敷の外ですらそうであるようだ。
フラヴィアは、マリータから見ても明らかなほど異質な……つまりは『孤高の』娘だった。





この一件以来、フラヴィアはマリータに僅かながら親切さを見せ始める。
約束通り、夕飯後には果実の一番瑞々しい部分を与えた。
屋敷に自分しかいない時には、マリータにも休息を勧めた。
特にマリータの心に残っているのは、ジーン達が揃って山向こうのパーティーへ出掛けた日だ。

「……なによウェイン、アンタ風邪引いちゃったの? どうせまた、裸で寝たりしたんでしょ。
 看病してくれる人はいるの? ……そう、じゃあ侍女の言う事をちゃんと聞きなさい。
 ……うん、……うん。…………そんなに謝り倒さなくたって、一度デートがフイになった位で怒らないわよ。
 アンタのそういう実直さって好きだけど、度が過ぎると鬱陶しいものよ。……それじゃ、お大事に」

階下の電話でフラヴィアが話すのを、マリータは掃き掃除をしながら聞いていた。
フラヴィアは恋人であるウェインとデートの予定があったためにパーティーを欠席したのだが、
どうやらそのデートも相手の病気でキャンセルとなったらしい。
「……残念でしたね」
マリータは掃除の手を止め、階段を上がってくるフラヴィアに話しかける。
フラヴィアは、それに反応してしばしマリータを見つめた。ふと視線をやったにしては長い、注視だ。
失礼だったかとマリータが口を押さえた直後、フラヴィアは口を開く。
「……ねぇマリータ。あんた一度、化粧でもしてみない? ソバカスだらけだけど、元は案外悪くなさそうよ」

暇を持て余したフラヴィアの提案により、マリータは次女の部屋に招かれた。
そして三面鏡の中、生まれて始めての化粧を施される。
白粉をたっぷりとつけ、雪のように白い肌を作り上げ。
赤髪は丁寧なブラッシングの後に結い上げて。
眉を細く剃り、額の髪の生え際も剃って、顔の白さをさらに強調し。
その末に鏡に写っていたのは、少し前とは見違えるほどに美しいマリータだった。
「これが…………あたし…………?」
マリータは思わず呟く。フラヴィアはその後ろで満足げに頷いた。
「そうよ。思った通り化けたわね。
 せっかくここまでやったんだもの、ちょっと街に買い物に出ましょうよ!
 着ていく服は、私のタンスから好きに選んでいいわ」
こうしてマリータは、面白がるフラヴィアに乗せられる形で、初めて大きな街を訪れる。

洒落た店に、優雅な町並み。賑やかな雑踏。
それは、マリータのまるで知らない世界だった。
「…………すごい、すごい…………!!」
マリータは胸をときめかせ、目にするもの全てに感動を表す。
「別に普通……なんだけどね」
フラヴィアは苦笑しつつ、はしゃぐマリータの手を引いて進んだ。
しかし花屋の角を曲がったところで、2つの影はぴたりと動きを止める。
原因は、カフェテラスに腰掛けた若い女だ。
「……あらぁ、これはこれは。“ミレード御殿”のフラヴィアさんじゃない」
女はフラヴィアに向かって声を上げた。
口元を隠す豪奢な扇子に、煌びやかな頭飾り。世事に疎いマリータでさえ、一目で裕福な家の娘だと解る。
「ご無沙汰ね、ミリエーヌ」
フラヴィアは澄まし顔で答えた。相手を快くは思っていない風だ。
しかしミリエーヌという少女は、それをさして気に留めるでもなく、注意をフラヴィアの後方へと向ける。
すなわち……フラヴィアに隠れるようにして立っている、マリータへと。
「ところで、フラヴィアさん? その後ろにいらっしゃる方はどなたかしら。あまり、お見かけしないようだけれど」
身に纏わりつくようなその物言いに、マリータは帽子で顔を隠しつつ俯く。
「彼女は…………私の、友人よ」
フラヴィアは言葉を選びながらも、堂々と胸を張って告げる。
マリータは、思わず顔を上げてフラヴィアを凝視した。
「そう」
ミリエーヌは、そうした2人の仕草を興味深そうにながめながら、ただ小さく呟くのみだ。
マリータにしてみれば、その言葉の裏に幾百の悪意が感じられるようだったが。

「……良かったんですか? その、あたしなんかが、フラヴィア様のお友達なんて……」
「何言ってるのよ、本当は友人どころか妹でしょ。
 それをそのまま言って、お母様達の耳に入ると厄介だから誤魔化しただけよ」
「そうですか……お気を使わせてしまって、すみません」
「いいって。ほら、あそこでケーキでも食べましょ。すっごい美味しいんだから」
かつてないほど親切にされながら、マリータは喫茶店に足を踏み入れる。
そこで初めて口にしたケーキは、これも彼女の価値観を一変させるほどのものだった。
とてつもない甘さとコクを有したクリームが、脳髄をとろけさせる。
日々消耗し続けた心身が癒されていくのがわかる。
街を訪れて以来の華やかな記憶が、まさにこの瞬間、マリータの中で結実していた。
とても幸せだ。だが…………それだけに残念だ。

 (――――こんな素敵な世界があったなんて、思いもしなかった。すごく、居心地がいいな。
   フラヴィア様は……ううん、この街にいる皆は、ずっとこの幸せの中にいるんだ。明日も、明後日も。
   ……でも、あたしは違う。あたしは今日の夜からまた、あの惨めな生活に戻らなきゃいけない。
     ……………………イヤ、だなぁ…………………………。)

願わくば、この幸せをもう一日。そのささやかな願望は、未練の楔としてマリータの心へ打ち込まれた。
彼女自身も気が付かぬほど、奥深くへと。





ジーン達は変わらずマリータを奴隷のように酷使し、フラヴィアは時おり甘い夢を見せる。
その生活が3ヵ月ほど続いたある晩、ついに来るべき時が来る。

「おまえ最近、やけにマリータに甘くしてるようね」
肉厚のステーキにナイフを入れながら、ジーンはふいに問うた。
疑惑の矛先は、言わずもがなフラヴィアだ。
「そうかしら」
フラヴィアは澄まし顔で答える。
ジーン達がマリータを疎んじているのは明白であり、肯定は面倒を招くとの判断ゆえだろう。
しかしこの夜に限っては、ジーン達も確証があって話を切り出したようだ。
「とぼけないで! 花屋のラッドが、街でマリータの姿を見かけたって言ってるのよ。
 彼って街一番のプレイボーイだから、女の見間違えだけは絶対しないもの!」
長女のミディは、彼女がよくそうするように、金切り声を上げて母に続いた。
「それにフラヴィア姉さまったら、最近マリータにお菓子やフルーツをあげたりしてるのよ。わたし見たもの」
末女のララさえも姉達に同意する。
「………………っ!!」
マリータは床に置かれた銀皿から口を離し、見る見る顔面を蒼白にしていった。
街で姿を見られていた。菓子や果物を貰っている事まで知られてしまった。
義父アンソンが死んで間もない頃、砂糖壷に指を入れてほんの少し舐めただけで、尻が腫れあがるまで箒で打たれたものだ。
いったい今度は、どんな容赦のない折檻が待っているのか。
折檻の終わった後も、手足の十本の指がきちんと繋がっているのだろうか……それほどに思える。
涙さえ滲みはじめたマリータの視界で、フラヴィアの瞳が動く。
フラヴィアは、いつもの通り毅然とした瞳でマリータを見やった。そしてその瞳は、そのまま母であるジーン達に向けられる。
まるで、矛を構えるかのごとく。
「どういうつもりなの、フラヴィア?」
ジーンの問いを、フラヴィアは正面から受け止めた。
「どういうつもりか……なんて、改めて詰問されるとは思わなかったわ。
 もしも私がマリータに甘くしていたとして、それに何の問題があるというの?
 マリータだって、父が家族と認めた一員のはずでしょう。
 この際はっきり言っておくけど、マリータにだけ待遇の差をつけるのは間違ってるわ!」
胸中に一片の曇りなし、とばかりに断言するフラヴィアに、その姉妹は表情を強張らせる。
しかし。年の功か、ジーンだけは口端に薄い笑みを浮かべた。
「とんだ偽善ね」
「……なんですって?」
母の一言に対し、フラヴィアは珍しく憤りを露わにする。ジーンは笑みを深めて続けた。
「偽善、と言ったのよ。マリータへの待遇の差に疑問を持ったなら、どうしてもっと早く、改善を主張しなかったの?」
「――――っ、それは…………」
フラヴィアはここで初めて言葉を詰まらせる。自身の矛盾に気がついたのだろう。
フラヴィア本人が積極的にマリータを虐げなかったとはいえ、奴隷扱いを見過ごしていたことは事実なのだ。

もっとも、フラヴィアは産まれたその時から屋敷住みの令嬢だった。
物心つく前から、母も姉も、優しい父に甘えるばかりで自由奔放に暮らしていた。
そのような特殊な環境に生まれ育った以上、当然フラヴィア自身も優雅な暮らしに疑問を持たない。
つまり、使用人ありきの生活を当然のように考えてしまう。
「おまえ、心の底からマリータの事を心配して言っているの?
 違うでしょう。おまえは自分が安全な場所にいるのをいい事に、目下の人間を憐れんでいるだけよ。
 他人の飼っている小鳥を、可哀想だから外に離してやれと言っているのと同じ。
 浅はかで薄っぺらな偽善だわ」
「ち、違う!」
ジーンの更なる追求に、フラヴィアは叫んだ。
プライドの高い女性だ。たとえ自ら気付き始めているとはいえ、自分のこれまでを『偽善』とする事は耐え難いのだろう。
ジーンは頑なに否定するフラヴィアをしばし睨みつけ、そしてふと思いついたように笑みを戻す。
マリータが目にした中でも、指折り数えられるほどに禍々しい笑みだ。

「…………ふぅん。そこまで言うなら、証明してご覧なさいな」
「証明……?」
「そうよ。今この瞬間からマリータと“立場を入れ替えて”、おまえが虐げられる側になるの。
 その生活を続けてもまだ私に意見できるなら、そこに価値があると認めてあげるわ」
「っ!!」
まさに悪魔的な提案だった。
マリータも、フラヴィアも、そのような展開を想定してはいない。
この場でどのような結論が出るにせよ、互いの明日は大きく変わらぬものであると思っていた。
マリータは明日の食事のために支度をし、古い電球を取り替える。
フラヴィアは今日の事を日記に書き留め、風邪を引いた恋人の身を案じ、紅茶を飲んで眠る。
その生活が続いていくはずだった。
それが、逆転するというのか。
「へぇ、面白そうじゃない。確かに、そんないいお皿で美味しいお肉食べながらお説教されたってねぇ。
 それこそ、マリータに失礼じゃないの?」
「そうよね、本当にそう! フラヴィア姉さま自身が、マリータの生活をしてみればいいわ。
 それにマリータ本人は、一度も待遇に不満なんて漏らさなかったじゃない。お姉さまの主張は、独りよがりなのよ!」
ミディとララも母の提案に賛同し、机上は三対一の空気に支配される。
「み、皆様……そ、そこまで…………」
マリータは目を泳がせながら立ち上がった。この悪い空気を何とかしなければ、という気持ちからだ。
しかし、それを制する様に、フラヴィアが叫ぶ。
「…………解ったわ。私はマリータの代わりになる、偽善者と謗りを受けるぐらいなら!
 私のこの胸には、お父様から頂いた真実の誇りが生きているもの!」
退くに退けないのだろう。
ここで言い包められて退くような事があれば、まさに偽善者そのものになってしまう。
ならば、あえて罰を受けよう。マリータと同じ苦しみを味わい、言葉に正当性を持たせよう。
そう覚悟を決めたらしい。

「よく言ったわね。じゃあ……やってみなさいよ!」
初めに行動を起こしたのは、長女ミディだった。
彼女はやおら立ち上がると、フラヴィアの眼前にある皿を勢いよく叩き落とす。
金の皿は、硬質な音を立てて床に転がった。
「ほぉーら、床に落ちたわよ。お食べなさいな。犬みたいに這いつくばってね!」
ミディは意地の悪さを隠そうともせずに告げる。
「…………ッ!!」
フラヴィアは一瞬姉に鋭い視線を向けたが、命ぜられるまま椅子を降り、這う格好で皿に近づいた。
そして数秒ほどの躊躇ののち、半ばほど床に接するステーキにかぶりつく。
姉妹と母から、キャハキャハと笑いが起きた。
「ああ、はしたない。床にはあんまり舌つけないでよね、“フラヴィア”。
わたし達も歩く床なんだから、おまえみたいな汚らわしい人間の唾がついてると不愉快なの」
そう発言したのは、末女であるララだ。
つい先刻までフラヴィア姉さまと呼んでいた名残が、早くも無くなっている。
フラヴィアは意地からか、一心不乱に肉に喰らい付いていた。
姉妹はそのフラヴィアに対し、考えつく限りの謗りを浴びせ続ける。
正気の沙汰ではない。
「あ……ああ…………」
マリータは狂った情景を前に、ただ震えて立ち尽くしていた。
と、その肩に優しく手が置かれる。マリータが怯えながら横を向くと、そこにはジーンの笑みがあった。
マリータの前では一度も見せたことのない、柔和な顔。
まるで憑き物が落ちたかのように、慈愛に満ちた母親の顔をしている。
だがマリータにとってその表情は、過去のどんなジーンの顔より恐ろしかった。
「どうマリータ、あの姿は。惨めでしょう」
「え、あの…………」
「惨め、だよねぇ。マリータちゃん?」
ミディも同じく笑みを作り、ジーンとは逆側の肩に手を置く。
「あ、いえ、あの、え、えっと…………」
「まさか! 惨めじゃないなんて言わないよね。ねぇ、“マリータ姉さま”?」
最後にララが正面から覗き込めば、マリータはどこにも視線を逃せなくなる。

六つの瞳に凝視され、マリータは喉を鳴らした。
逆らえない。逆らっては、いけない。マリータの防衛本能がそう警鐘を鳴らしている。
「…………惨め、です………………」
その一言が呟かれた瞬間、フラヴィアの口の動きが一瞬止まる。
ジーン達は口に手を当て、心から可笑しそうに笑い転げる。
ごめんなさい。マリータは心中で謝罪した。
「さぁさ、マリータ。あったかいお風呂に入って、フカフカの布団で寝ましょう。
 後の片付けは、全部フラヴィアがやってくれるわ。
 ……フラヴィア! いつまでもモソモソ食べてないで、“いつものように”全部キッチリ片すのよ!」


無駄に種類の多い食器を洗い、迷いに迷いながら元あったであろう棚の場所に戻す。
テーブルクロスを取り替え、床を拭き清める。
それら全てが終わった時は、すでにとっぷりと夜が更けていた。
普段であれば、柔らかなベッドに身を沈めて寝入っている頃だ。
しかし、今日からは違う。
寒々とした風の吹く中を抜け、藁の敷かれた馬小屋で眠る事になる。
藁はチクチクとフラヴィアの白い肌を刺した。
かといって乳液を塗る事もできず、洗顔すらしていない。
心安らぐアロマの代わりに、噎せかえるような馬の体臭が鼻をつく。
外からの隙間風がたまらなく冷たい。
「…………昨日まではマリータがここに寝ていたのよ。なら、死ぬことなんてないわ」
フラヴィアは、歯を食いしばって苦境に耐えた。

次の朝になっても、昨晩の事が夢に変わるわけではない。
「ちょっと、いつまで寝てるつもり? 私達の朝食の用意はどうしたのよ。
 一番遅くまで眠りこけてるなんて、いいご身分じゃない!」
馬小屋をガンガンと叩きながら喚く声で、フラヴィアは目を覚ます。
頭が痛い。身体の節々も痛い。やはり藁など、安眠できる代物ではないようだ。
それでも仕方なく、フラヴィアは馬小屋から歩み出た。
するとその顔に、勢いよくバケツの水が浴びせられる。
「きゃっ!!」
「あはははっ、目が覚めたでしょう。馬小屋のくさい匂いも取れて、ちょうどいいわ!」
ミディは髪から雫を垂らすフラヴィアを見て大いに笑った。
「くっ…………!!!」
フラヴィアは射殺さんばかりに姉を睨みつつ、握り拳で服の裾を絞る。
「ああ、ああマリータ、お前は朝食の準備なんてしなくていいんだよ。
 そういうのは全部フラヴィアにやらせればいいんだ。さ、部屋で音楽でも聴いておいで」
台所からは、優しげなジーンの声が聴こえてきていた。
間違いではない。ミレード家の日常は、一変したのだ。

ジーン達の変わり身は早かった。
まるで以前からそうであったかの如く、マリータには娘として接し、フラヴィアを奴隷のように扱う。
パーティーに連れられるのはマリータで、その間屋敷の掃除を命ぜられるのはフラヴィアになった。
いじめとは、なぜ起きるのか。なぜ人の世から無くならないのか。
対象が憎いから……ではない。
特定の何者かを蔑む事で、それ以外の多数が安心感を得るからだ。
『対象が誰であるか』は瑣末な事柄に過ぎない。つねに、虐げる対象さえ存在するならば。



ジーン達のフラヴィアに対する嫌がらせも、当初は邪険に扱う程度のものだった。
足を引っ掛けて転ばせたり、水を浴びせたり、床のものを犬食いさせたり。
しかしフラヴィアが折れないとなると、嫌がらせは日増しに激化していく。
まだ処女であったフラヴィアを犬と交尾させたのも、ジーン達にしてみれば悪乗りの延長線上だ。

初旬にしては日差しの強い昼。
広い庭に幾つものテーブルセットが設置され、多くの人間が茶を愉しんでいる。
その視線の中心で、フラヴィアは大型犬と『交尾』していた。
後ろから覆い被さられ、処女穴に犬のペニスを捻じ込まれて。
犬のペニスは、人間のそれとはまるで違う。
内臓そのものといった風で、赤黒く、何本もの細い血管が走っている。
股間部の白い毛皮から生えたその異物が、ピンク色をした少女の膣に入り込む光景。
それは、まさに衝撃的だった。
「あはははっ、すごい。ホントに入ってるんだ!」
「犬食いするような人間にはお似合いね! いいカップルよ」
「しっかしまさか、あのフラヴィアお嬢様が犬とヤッてるなんてなぁ。笑えるぜ」
「確かに。この女、せっかくこの僕がパーティーで誘ってやったってのに、澄まし顔で断ったんだよ?
 『キザな男は嫌い』なんて言って、僕に大恥まで掻かせてさ。
 あの時はなんてお高く留まってるんだと思ったけど、なるほど、犬が好みだったわけだ!!」
集まった人間たちは、ティーカップ片手に笑いあう。
フラヴィアの若さと美しさに嫉妬する女達、ダンスパーティーで誘いを断られた男達。
その悪意が、高級な紅茶の香と共に発散されていく。

「う、くぅ……っ!! ううっぐ、うう……う…………ぅう“!!」
首輪を繋がれたフラヴィアは、必死に歯を食い縛って挿入の痛みに耐えていた。
結合部からは純潔の証が滴っている。
瘤つきのペニスで膣を無理矢理に拡げられているせいか、滴り方は変則的だ。
そしてその瘤の太さは、膣の中で動くたび、刻一刻と増しているようだった。
初めは所詮犬のペニスと嘲笑っていた男達も、いつしかその膨張率に息を呑むようになっていく。
もはやフラヴィアを憐れんで力任せに引き抜こうとしても、けして抜ける事はないだろうと思えるほどに。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ…………」
大型犬はショー目的で特別に訓練された個体であり、手慣れた様子で黙々とフラヴィアを責め立てていた。
這うフラヴィアの手の平と膝は石畳に乗っているが、犬の足は茂みに半ば入り込んでいる。
そのため腰が振られるたび、さすっ、さすっ、さすっ、と草葉の揺れる音が響いた。
「……………………ぃたぃ………………った、…………いたぃ……………………!!!」
よほどの痛みなのだろう。
あのフラヴィアが、伏せた顔の中で呻きを漏らしているのだから。
それは草の音に紛れて観衆に届いては笑いを呼んだ。

大型犬が少女を押し潰すようなスタイルの交尾。その果てに、とうとう射精の瞬間が訪れる。
犬の射精は三段階ある。
まずは潤滑油として、あるいは子宮内洗浄の目的で尿が注ぎ込まれる。
「っ…………!!!」
膣奥に放尿されているのが解ったのだろう、フラヴィアの両手が強く握りしめられた。
それでも声を上げないところが、彼女の意地だろう。
しかし……放尿が終われば、今度は二段階目、正真正銘の精液が注がれる。
「おっ、何だ何だ、まだ出るのか?」
「ひぇー、犬の射精って長ぇんだなあ!」
「ありゃ完全に子供出来ちゃうね。嫌だ嫌だ、犬の仔孕むなんて。悪い事はしないようにしよっと!」
観衆達は、フラヴィアの身の強張りと、犬の腰の震えから状況を窺い知る。
声こそ上がらないとはいえ、フラヴィアの示す反応は雄弁なのだ。
そして、ついに三段階目。この射精は、雌犬の子宮を精子で満たすために行われる。
瘤で塞がれて逃げ場のない膣内に、破裂しそうなほどの射精が繰り返される。
これには、さすがのフラヴィアも耐えられない。

「い、いやああああああぁーーーーーーっっ!!!!」

項垂れていた顔を上げ、美しい金髪を振り乱しながら絶叫を迸らせる。
その実況は、様子を見守っていた悪意ある者達の心を満たした。
まさに割れんばかりの笑いが、広間を歌のように覆い尽くす。
「いやああっ、いやあやめてっ!! もう中に出さないでっ!!!!」
フラヴィアは背後の支配者に哀願する。
場のほとんどの人間にとって、鼻水にまみれ、眉を垂らしたその顔を見るのは初めてだろう。
しかし、大型犬は動きを止めない。むしろ快感を求めてか、いよいよ腰を激しく動かす。
フラヴィアはただ犬の腰振りにあわせ、人形のように振り回されるばかりだ。
抗えるはずがない。少女と大型犬では、筋力に天と地の差があるのだから。
それは、まさに服従だった。犬に屈服させられる犬…………下等生物。
数日前までのフラヴィアとは、なんとかけ離れた地位である事か。

幾度にも渡る獣姦が終わり、ようやく瘤の収まったペニスが抜き出される。
その瞬間、噴水のように白い液が噴出した。
フラヴィアの小さな膣に、限界をとうに超えた容量を詰め込まれた精子だ。
フラヴィアは…………とうに、意識など保っていなかった。
かつて経験のない苦痛と恐怖、恥辱。そして何より著しい体力の消耗。
それによって、白目を剥きながら石畳に抱きついている。
観衆達はそのクライマックスにいたく満足しながら、夕暮れの中で席を立ち始める。
「………………!! …………………………っ!!!」
笑い声が絶えない中、特等席ですべてを目にしたマリータだけが、得も言われぬ恐怖に震えていた。





マリータは家事の一切から開放され、毎日遊んで暮らせるようになった。
贅を尽くした夕食を平らげ、食後のフルーツは最も甘い部分だけを齧って捨て。
昼には街へ出てケーキと紅茶を嗜み、夜には馬車に乗ってパーティーへ出向く。
それが許される身分だ。
しかし、フラヴィアの手伝いだけは許されなかった。
他人の目がない所でも、もし見つかれば、という恐怖から手伝う事はできなかった。
マリータは、再び奴隷の生活に戻るのが怖かった。
フラヴィアが自分に助けを求めてこないのが、マリータにとっての救いだ。
だがマリータは、フラヴィアが家族から虐げられるのを、屋敷の様々な場所で目撃した。

ある晩には、フラヴィアはミディによって、延々と秘部を嬲られていた。
手洗い場に備えつけられた巨大な鏡の前で、ミディは次女を後ろから抱き抱えていた。
フラヴィアの手は後ろで縛られているらしい。
そうして抵抗を封じられたまま、クリトリスを姉の指で刺激され続けているようだ。
「ほぉら、どんどんヌルヌルになってきてる。お豆もすっかり硬くなって、堪らないんでしょう」
ミディは、囁くようにフラヴィアに告げた。フラヴィアは俯いたまま反応を示さない。
責めはかなり長時間に渡って続いているようだ。
フラヴィアの白い肌は、全身が夥しい汗で濡れ光っている。
秘部の状態は影になっていてよく見えないが、クリトリスを指が刺激するたび、腹筋が蠢く。
腰が艶かしく揺れ、頭が揺れ、深く俯いては戻るを繰り返す。

よく聴けば、常にフラヴィアの息遣いがしていた。
ミディの指が単調に動いている間は、はぁ、はぁ、と小さく繰り返されている。
そして指が妙な動きをし、ぬちっと水音を立てる瞬間、はぁーっと息遣いが大きくなる。
頭部の俯きもその時が最も大きく、腰も跳ねるように後ろに動く。
 (イッてるんだ…………)
同じ女として、マリータにははっきりとそれが解った。
膣内からぬちぬちと断続的な水音が立ち、フラヴィアはとうとう顔を上げた。
濡れた金髪が額に貼り付き、口を半開きにした顔は異様なほど扇情的だ。
疲弊してはいても、やはり美人なのだと再認識させられる。
「フラヴィア、おまえ今イッたんでしょう。一体何度目なの、はしたない女ね」
ミディが悪意を込めて囁くと、フラヴィアは姉を睨み据える。
「ふん、相変わらず生意気ね。おまえ、自分が何で折檻されてるのか理解してるの?
 マリータでもちゃんと作ってた冷製スープを、あんな不味い出来にした罰なのよ。
 すべておまえが悪いの。このまま何時間でも……おまえが泣き喚くまで続けるからね」

マリータはそこで恐ろしくなり、自室……かつてのフラヴィアの部屋に取って返した。
そこから数時間後。ようやくまどろみ始めたマリータは、異常な叫び声で目を覚ますことになる。
それがフラヴィアの叫び声だと判ったのは、翌朝にミディが自慢話を始めてからだった。



また別の夜には、ララがフラヴィアを虐げている所も見かけた。
夜中にマリータがトイレに向かうと、ララの部屋の扉が少し開いており、光が漏れている。
中を覗くと、ララが秘部を舐めさせている所だった。
「ほら、もっと丁寧に舐めなよフラヴィア。そんなのじゃ、ちっとも気持ちよくないわ」
ララはベッドに腰掛け、フラヴィアを見下ろしながら告げる。
実に冷たい瞳だった。昼間にマリータとチェスをしていた人物と同じとは思えない。
フラヴィアは命ぜられるまま、一心にララの秘裂へと舌を這わせている。
「あっ、そろそろおしっこが出そうよ。その口で全部受け止めなさい。
 あーら、嫌そうな顔ね。マリータの代わりにわたしの肉便器になるって、偉そうに宣言してたくせに」
ララは、顔を上げたフラヴィアを眺めて笑みを浮かべた。
そして自らの指で秘裂を拡げ、放尿の体勢に入る。
 (うそ、やだっ…………!?)
マリータは目を疑った。本気でフラヴィアに自らの尿を飲ませようというのか。
マリータの戸惑いを余所に、じょぼぼぼと放尿の音が聴こえ始める。
それは激しい泡立ちと共に、間違いなくフラヴィアの美しい顎の上へと注がれている。
「あーもう、こんなに零しちゃって。明日の朝一で、カーペット取り替えといてよね。
 わたしがヴァイオリンのお稽古から帰るまでに替わってなかったら、おまえ、もっと酷い目に遭うわよ」
放尿を終えたララは、呆然とするフラヴィアに囁きかける。

マリータは自室に戻ってからも、身の震えが止まらなかった。
虐めはどんどんとエスカレートしてきている。
マリータは生来大人しい性格で、反抗する事もなかったのが幸いしていたのだろう。
しかし反骨心の強いフラヴィアは、母や姉妹達の嗜虐心を油のように燃え上がらせる。
もし今、何かのきっかけでまた立場が入れ替わるような事があれば……

「………………耐えられない……………………」

マリータは、ベッドの上で頭からシーツを被り、涙を零しながら呟いた。

この頃からだ。マリータが、積極的にフラヴィアへの虐めに加担するようになったのは。

「ほらフラヴィア、感じる? 今、お前の子宮に触ってるのよ」
そのおぞましい台詞を発したのは、ジーンではない。ミディでも、ララでもない。
マリータだった。
拘束具で手足を封じ、抵抗を奪ったフラヴィアの膣に、少しずつ指を入れていく。
潤滑油を用いながら一本また一本と指を増やし、今ではとうとう拳そのものが入り込んでいた。
「うう、う……うう、ぐぅっ…………!!」
フラヴィアは額に脂汗を滲ませながら、苦しげな呻きを漏らす。
しかしマリータにしてみれば、そうしてフラヴィアが苦しんでいる様こそが心の安らぎだ。
「おやおや、堪らなそうな顔してるねぇ」
「ホントに。悔しいけど、今日一番苦しめてるみたいよ」
「さすがマリータ姉さま。容赦がないわ」
後方ではソファに腰掛けたジーン達が、責めの様子を見守って笑っていた。
いじめている間は、母も姉妹も上機嫌でマリータに接してくれる。
再度立場を入れ替えられる危険性が低くなる。
マリータは、フラヴィアを手酷く虐めるほどに、自分の立場が揺るぎのないものになっていくのを実感していた。
「…………マリ…………た………………」
拳で蹂躙している最中、気絶しかけているフラヴィアが名を呼んだ。久し振りのことだ。
瞬間、マリータの脳裏に記憶が甦る。
ブドウという物の味を教えてくれた。
初めて街に連れ出してくれた。
自分を庇い、身代わりになると言ってくれた……。
しかし。そうした思い出を振り切って、マリータは唇を引き結ぶ。
次の瞬間、マリータは強かにフラヴィアの頬を張った。
ミディが口笛を吹く。
「気安く私の名を呼ばないで。けがらわしい!」
マリータは、かつて彼女自身が恐れた冷たい瞳でフラヴィアを睨み下ろした。
「………………っ!!」
頬を赤く染めたフラヴィアは、しばし目を見開き、やがて諦めたように視線を逸らす。

    ――――もう、戻れない。
        ――――もう、戻らない。

手の平に焼けるような熱さを感じながら、マリータは胸中で呟いた。





自由を手にしてからのマリータは、美しく変わっていった。
粗末にちぢれていた赤髪は、燃えるようなストレートヘアに変わった。
ソバカスもなくなり、化粧の似合う美人顔になった。スタイルさえ以前とは別物だ。
食事が違い、化粧品も違う。
そして……恋をした事も大きいだろう。

マリータは、フラヴィアのすべてを受け継ぐと決めた。それは、恋人に関してもそうだ。
名はウェイン・アクワイア。
有力貴族の嫡男で、誠実な好青年。さらには背が高くてハンサムだ。
フラヴィアに惚れ込んでいた彼は、パーティーでマリータに質問を繰り返した。
犬と交尾していたという『悪質な噂』を聞きつけたらしい。
その縁で、マリータはウェインに近づいた。
フラヴィアの事は上手く濁しつつ、ウェインにとって都合のいい女を演じた。
マリータは、物心つく前から奴隷としてジーン達の顔色を窺っていた少女だ。
世間知らずの坊やに取り入るのも難しくはない。
やがてウェインはマリータに惹かれはじめ、ついにフラヴィアに先んじて同じ寝台に入ることを許す。
そこから婚約の話に至るには、長い時間は必要なかった。

マリータはしばしウェインと共に過ごし、半年ぶりにミレードの屋敷に戻る。
ジーン達は出かけているため、屋敷の扉は閉まっていた。
合鍵で扉を開け、エントランスへ。
食堂を通り過ぎ、階段を降りれば……そこに、石造りの小さな部屋がある。
使わなくなったオーブンを改良したその部屋は、外からしか開けられない。
ただ上方についた窓が、内と外の空気を交わらせるのみだ。
マリータは、その窓から中を覗き込む。薄暗闇の中に、ひとつの人影が見えた。

首輪をつけられ、痩せ衰えて、乾燥した小麦のような髪を縮れさせた女。
ほとんど裸に近いが、股の部分には太いベルトのようなものが見える。
貞操帯……それも、膣と肛門部分に極太の栓がついた特注品のようだ。
中にいる女は、首輪で拘束されたまま、責め具を嵌め込まれて放置されているらしい。
「ハーイ、フラヴィア」
マリータはオーブンの扉を叩いて告げる。
項垂れていた女の顔が上がり、やつれきった顔が露わになる。
とても美人とはいえない顔だ。

「…………たすけて、マリータ………………。」
女……フラヴィアは、掠れきった声で哀願した。
この半年の間に、どれほど容赦のない責めを繰り返されたのだろう。
もはやかつての気の強さなど面影もない。
マリータは、そんなフラヴィアを乾いた目で見下ろしていた。
助ける気など微塵もなかった。
「イヤよ。私は、お前みたいに恵まれた環境を捨てられない。今の暮らしを失うのが怖いの。
 そういう、愚かで弱い人間なの。…………可哀想でしょう? お前なら、そう言ってくれるんでしょう?
 大丈夫よ。お前は強いんだもの。そんな生活でも、きっとやっていけるわ」
マリータが微笑んだ瞬間、外で馬車のベルが鳴る。
「あら、お迎えみたい。ちょっと行ってくるわ」
「……どこ、へ…………? それに、その格好は…………?」
フラヴィアは立ち上がり、改めてマリータの姿を凝視する。
事実、マリータの格好は変わっていた。
煌びやかな白いドレス……ウェディングドレスだ。
「あら、聞いてないの? 私ね、今日ウェインと結婚するの。元はあなたの恋人だったのよね。
 彼、最初は心に決めた相手がいるからって、中々私を受け入れてくれなかったのよ。
 でも、何度も何度も何度もデートを重ねて、体も重ねて…………ようやく、私に振り向いてくれたの」
「……………………!!!!」
「あははっ、可愛い表情。ありがとう、祝福してくれて。私も、お前には感謝してるのよ。
 お前は私に光をくれた。こんなに素敵な人生をくれた。
 ……ねぇ。人生って、とても素敵なものよね!」
マリータは、彼女の人生で間違いなく最高の笑みを浮かべ、オーブンの扉から離れる。
そして揚々と歩を進めると、扉を開けて日の当たる外へと踏み出した。



鈴を鳴らしながら、馬車が遠ざかっていく。
フラヴィアはその場に崩れ落ちた。
空っぽになった頭と同様、ぐうぐうと腹が鳴っている。
床に転がっている生のジャガイモにまで這っていき、噛り付いた。
「ハグッ、アグッ、ン…………グッ、ゲホッ、ごぼっ!!」
無我夢中で食い、しかし噎せて、吐き出す。
そしてジャガイモをごろりと取り落とし、床に倒れこむ。

視界に映るのは、煤にまみれたオーブンの壁と、薄暗い闇。
そして身を伸ばしても届かない、遥か遠くにある光。


人生が、素敵………………?


そんな言い方、ずるい。ちっとも、つたわってこない。
せめて近くで言ってよ。この汚い床に這いつくばる、どん底の視線で…………。

フラヴィアは、虚ろな意識の底で考えながら、眠気に従って目を閉じた。



                          終



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プロフィール

Author:燻製ねこ
2chを名無しで彷徨う流浪の物書き。
百合とアナルが主食。
強い女と性拷問も大好き。

ゆっくりしていってね!

※当ブログはリンクフリーです。

mail : kunseneko@gmail.com

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